ダイドーリミテッドとアクティビストとの応酬が終結
(画像=「セブツー」より引用)

「ニューヨーカー(NEWYORKER)」を展開するダイドーリミテッドを巡る、アクティビスト(物言う株主)との応酬劇が終幕した。ダイドーリミテッドの株式を24.85%保有し、筆頭株主だったストラテジックキャピタルが7月12日までに同社株をすべて売却し、5.14%を保有していた旧村上ファンド系の南青山不動産も12日までにすべて売却した。

ダイドーリミテッドは1879年創業の老舗アパレルメーカーだが、1992年に売上高503億1200万円、営業利益43億4400万円、当期純利益67億5700万円の過去最高となる決算を叩き出して以降は、主力のアパレル事業の不振が続き、11期連続で営業赤字に陥っていた。

2024年3月期の通期連結決算は、売上高は286億9700万円(前期比1.7%増)、営業利益は4億4200万年の赤字(前年は4億8100万円の赤字)、親会社株主に帰属する当期純利益は2億9100万円(前期比95.7%減)と、増収ではあったものの前年に続いて営業赤字だった。

一方、ストラテジックキャピタルは2012年に丸木強代表取締役が設立したファンド。丸木社長は1982年に東京大学法学部を卒業した後、野村證券に入社し、企業の資金調達や新規公開株式(IPO)などを担当した。1999年ごろからアクティビスト活動を開始すると、日本におけるアクティビストファンドの草分けとして同社を成長させてきた。

この両者による応酬劇は、2022年11月25日に財務省にストラテジックキャピタルが保有するダイドーリミテッド株が5%を超えたと大量保有報告書を提出したところから始まった。その後、ストラテジックキャピタルは同社株を買い増していき、今年に入って同社が運営するファンドと合わせて議決権の32.2%を保有したことで筆頭株主になると、業績低迷などを理由に経営戦略の見直しや人事の刷新を訴えた。

ストラテジックキャピタルは6月27日の定時株主総会でオンワード樫山の元社長の大沢道雄氏らを含む6人の取締役候補を提案、ダイドーリミテッドもこれに対抗して独自の取締役候補を擁立するなど、対立が激しさを増していった。この頃にはダイドーリミテッドの経営陣に対して南青山不動産の村上世彰氏からも面談の申し入れがあり、議論を重ねていたという。

ストラテジックキャピタルからの株主提案に対しては、ダイドーリミテッドの労働組合も断固反対を表明する意見書を取締役会に提出していた。27日に開催された株主総会では、外部のエキスパートとしてダイドーリミテッドの中期経営計画の策定に関与した成瀬功一郎氏を始め、ダイドーリミテッド側の候補5名が選任され、ストラテジックキャピタルからの候補3名が選任された。

その後、7月4日にダイドーリミテッドは2025年3月期の年間配当を20倍となる100円に増配するなどの株主還元策を発表すると、同社株は前日比14.8%プラスとなる122円高の945円に急騰し、さらに翌5日には前日比15.9%プラスとなる150円高の1095円で取り引きを終えた。

ストラテジックキャピタルと南青山不動産が7月12日に財務省に提出した変更報告書によれば、両社ともに保有するダイドーリミテッドの全株式をこの日までに売却していたことが明らかになった。7月9日にはブルックスブラザーズジャパンの元最高財務責任者でストラテジックキャピタルからの提案で選任された中山俊彦氏が一身上の都合を理由に取締役を辞任している。

物言う株主との1年半に及ぶ応酬劇は決着したが、ダイドーリミテッドの構造改革は今後も迫られる。2025年3月期の連結業績予想は、売上高は303億円(前期比5.6%増)、営業利益は1億円(前年は4億4200万年の赤字)、親会社株主に帰属する当期純利益は3000万円(前期比89.7%減)としており、長らく続いた営業赤字から脱すると予想はしている。創業145年の名門アパレルメーカーを今後、どう成長させていくか新経営陣の手腕に注目したい。