本記事は、安部 哲也氏の著書『13歳からのリーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
リーダーには才能が必要?
リーダーは生まれつきかどうか?
「自分はリーダーに向いていないのかな」と思ったことはありませんか? リーダーは“生まれつきのもの”でしょうか?それとも“育てられるもの”でしょうか? そんな疑問に対して、世界や日本の多くの研究や実例から、リーダーシップは才能だけでなく、学習や経験といった努力などによって高められる能力であることが示されています。 リーダーをイメージするとき、人々はしばしば「カリスマ」と呼ばれる有名人や歴史上の偉人たちを想像します。確かに、彼らはもともと特別な魅力や影響力を持っていたかもしれませんが、それだけではできるリーダーにはなれません。多くの場合、リーダーは人生のいろいろな経験などからスキルや知識を身につけ、リーダーシップを高めています。
リーダーシップの高め方
リーダーシップの具体的な高め方については、次の3つを参考にしてください。
1. リーダーシップの基本を学ぶ
リーダーに必要な能力は、学び、実践することで身につけていくことができます。例えば、目的・目標設定力、コミュニケーション力、メンバーをやる気にさせる力、問題を解決する力、意思決定力、人を育てる力など、これらは学び、実践することで向上させることができる能力です。本や講座などからも学ぶことができます。
2. 自分の経験と振り返りから学ぶ
リーダーシップは経験から学習するところが大きいものです。ある調査では、リーダーシップの7 割は、自分の実践経験と振り返りから学習されているという報告があります。実際にチームをリードする経験の中で、リーダーは成功や失敗から学び、振り返り、改善することで自分自身のリーダーシップに磨きをかけていきます。
3. 人から学ぶ
人からリーダーシップを学ぶことも大事な点です。自分がこうなりたいと思う「できるリーダー」のことをイメージし、自分の考え方や行動の参考にするのです。このような人たちをロールモデルといいます。
例えば、渋沢栄一 (みずほ銀行、東京ガスの前身の会社など500以上の会社設立に関係した人)や緒方貞子(日本人初の国連難民高等弁務官)のような著名な人物でもいいし、自分の先生や先輩、友だちなど身近な人でもよいでしょう。
また、自分では自分のことは意外とわからないものです。ですので、先生や先輩、友だち、親などからアドバイスやフィードバックをもらい自分の行動を振り返ることもリーダーシップを高めるために効果的です。
このように、適切に努力すれば人はリーダーシップを学ぶことができます。だれもができるリーダーになれる可能性を持っています。自分自身を常に向上させようとする意欲によってそれを引き出し、高めることが重要です。リーダーシップは生まれつきの才能だけでなく、学んだスキル、経験、そして継続的な努力の成果なのです。
できるリーダーは2つの行動をとる!
リーダーの行動は大きく2つある
リーダーがとる行動(リーダーシップ行動)にはどのようなものがあるのでしょうか? それは大きく課題達成に関するものと、組織・人間関係に関するものに分けられます。
課題達成に関するものとしては、チームの目的・目標をつくりチーム全員で共有することや、それを実現する具体的な方法を考え、実践すること、問題が起こったときに解決することなどが含まれます。
組織・人間関係に関するものは、人の相談にのる、人をはげます、育成する、チームワークを保つなどです。
PM理論とは?
この2つを指標とするのが「PM理論」です。PM理論とは、リーダーシップ行動をP軸(P:Performance(パフォーマンス)軸)とM軸(M:Maintenance(メンテナンス)軸)で分け、4つに分類したものです。P軸は課題や目的・目標を達成するための行動、M軸は人間関係を維持するための行動の指標です。これにより分類された4つのタイプは下記の通りです。
1. pm(スモール・ピー・エム)型リーダー
チームの課題達成力も弱く、人間関係をつくる力も弱いリーダーです。いわゆる「ダメなリーダー」です。
2. pM(エム)型リーダー
チームの目的・目標達成よりも、人間関係を優先するリーダーです。いわゆる「いい人タイプのリーダー」です。 人間関係をよくすることができるかもしれませんが、チームの成果を出すことが難しいかもしれません。
3. Pm(ピー)型リーダー
目的・目標達成に重点を置き、人間関係はあまり重視しないリーダーです。「厳しいリーダー」と見られることがあります。チームの成果は出せますが、メンバーとの人間関係をうまく保てない可能性があります。
4. PM(ピーエム)型リーダー
目的・目標達成、人間関係ともに積極的な行動をとるリーダーです。いわゆる理想の「できるリーダー」です。
チームの成果を出しつつ、チーム内の人間関係をうまく保てる理想のチームリーダーです。
できるリーダーはP軸の課題達成力と、M軸の組織(人間関係)維持力の両方の行動をとる必要があります。
今の自分は、P軸とM軸のどちらが得意か、今後はどのように考え、行動すべきかを考えてみてください。
もし自分1人だけで両方は難しそうだと思う人は、後述するシェアド・リーダーシップを活用し、例えば自分がP型、サブリーダーがM型リーダーシップを発揮することも可能です。
すばらしいチームをつくるためには、P軸とM軸の両方が必要となります。
このように自分の長所と短所を理解し、長所をいかし、伸ばし、短所を改善したり、人に協力してもらうなどして、リーダーシップを高めていきましょう。
客員教授聖心女子大学国際交流学科非常勤講師。福岡県生まれ。修猷館高校卒業。中央大学法学部卒業。BOND大学大学院 経営管理学修士課程(MBA)修了。パナソニック国内・海外部門にてシステムエンジニア、営業、マーケティング、企画、海外(香港)駐在など、リーダーシップ、マネジメントを経験。2002年、企業向け人材開発・コンサルティング会社EQパートナーズ(株)を設立。社長として同社を経営し、チーフコンサルタント・講師として、NTT、NTTドコモ、パナソニック、東芝、キオクシア、NEC、損保ジャパンなどで、経営者向け・次世代リーダー研修、女性リーダー研修、部課長・主任向けマネジメント研修などを多数実施。2005年より立教大学大学院ビジネススクールにて、リーダーシップ理論、起業家理論、交渉理論、修士論文指導などを担当。主な著書に『新版 課長の心得』『世界標準のリーダーシップ』(どちらも総合法令出版)、『World-Class Leadership』(World Scientific)