本記事は、安部 哲也氏の著書『13歳からのリーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
メンバーに自発的に動いてもらおう!
メンバーに自発的に行動してもらうには
メンバーに自発的に行動してもらうためにはどのようにリーダーシップを発揮したらよいか学びましょう。
1. ミッション・ビジョン・目標を共有する
リーダーは明確なミッション・ビジョン・目標をメンバーに共有しましょう。それらが明確で魅力的であれば、メンバーはよりやる気をもって行動しようとします。
2. 役割分担し任せる
リーダーは役割分担しメンバーに適切な役割を任せ、彼らに自分の能力を発揮する機会をつくりましょう。
自分の役割や責任を持つことは、自発的な行動の一歩となります。
3. フィードバックする
結果だけでなくメンバーの考え方や行動を評価し、よいときにはほめ、悪いときには今後よくなるように前向きなフィードバックをしましょう。適切なフィードバックは自発的な行動と改善を促します。
4. 挑戦する文化をつくる
メンバーに新しいことに挑戦する機会を提供し、行動した人をほめましょう。何も挑戦せずに成功するよりも、前向きに挑戦した結果の失敗はそれ以上に評価しましょう。
リーダーがこれらの4つのポイントを実践することで、メンバーは自発的な行動をとり、チームの成功につなげることができます。自発的な行動は、協力とチームワークを高め、チームの目的・目標の達成に貢献します。
外発的な動機づけよりも内発的な動機づけが重要!
チームメンバーの自発性を高めることは、ビジネスや社会活動でも重要です。アメリカの作家ダニエル・ピンクによる「モチベーション3.0」という考え方があります。
モチベーション1.0は、人間としての最低限の欲求「食べる」、「寝る」、「生活する」などの欲求です。これは最低限、だれもが満たされる必要があります。
ポイントは、モチベーション2.0と3.0です。
モチベーション2.0は、アメとムチによる外からの動機づけです。例えば、メンバーが成功した場合、給料UPやごほうび(アメ)を与え、失敗した場合、給料を減らしたり、しかりつけたりする(ムチ)などです。
このようなメンバーの動機づけもある程度は効果がありますが、こればかりではメンバーが外発的動機づけに慣れきってしまい、外発的な動機づけがなければ、自らモチベーションを高め、自発的に動くことができなくなってしまいます。
モチベーション3.0は、自分の心の中から出てくる内発的な動機づけです。「おもしろい」、「たのしい」、「やりがいがある」、「成長を実感できる」など心からわき出る内発的な動機でモチベーションを高めていくものです。
「あなたにとって何がおもしろい?」、「あなたの人生の目的は何?」、「どんなことにやりがいを感じる?」などとよく対話しながら、メンバーの内発的動機を引き出していきましょう!
モチベーション3.0を実現するためには、以下の3つのことを心がけましょう。
① チームの目的・目標、ルールはしっかり共有しつつ、できるだけ本人の意向ややり方に任せる
② 本人の夢や目的・目標とやることを関連づける
③ 本人の学習や成長を意識、実感させる
内発的動機づけを意識して、相手のモチベーションを高めていきましょう。
仲間を導くために必要な3つのこと
メンバーを導くための3つのE
メンバーを導くために必要な要素にはエンゲージメント(関与する)、エンパワーメント(任せる)、エヴァリュエーション(評価する)があります。これらの要素は、リーダーがメンバーを効果的に導くために大切な要素です。それぞれの要素を解説し、具体的な事例で説明します。
1. エンゲージメント(人間関係・信頼関係づくり)
リーダーはメンバーと緊密にコミュニケーションをとり、人間関係や信頼関係をよりよいものにしましょう。
傾聴、質問、承認をうまく使い、リーダーとメンバーがお互いを理解できる関係になるのです。
お互いに自分のことをできるだけオープンに話したり、相手のことを理解・共感したりすることなどがポイントです。
2. エンパワーメント(任せる)
メンバーのミッション・ビジョンの役割や権限、責任を明確に共有し、任せることで、メンバーの判断力をいかす機会を提供しましょう。メンバーが自発性を発揮できるようにしましょう。
3. エヴァリュエーション(評価する)
リーダーはメンバーの実績や考え方、行動やプロセスといったことを評価し、フィードバックしましょう。リーダーはメンバーの成長を支援し、チームのパフォーマンスを向上させます。エヴァリュエーションはメンバーに対して、できるだけすぐに、何がよくて何がよくなかったかを具体的にフィードバックし、今後よりよく改善できるヒントとなる内容をシェアすることが大切です。
学校での活用例
3つのEのクラブ活動での活用例をご紹介します。
1. エンゲージメント (人間関係・信頼関係づくり)
例えば、バスケットボールクラブのリーダーが毎回の練習前にチームミーティングを開いて、メンバーから意見や感じたことを共有させることで、お互いの考えを理解し合い、人間関係・信頼関係が生まれます。
2. エンパワーメント (任せる)
例えば、音楽クラブのリーダーがコンサートの企画や運営をメンバーに任せることで、彼らの主体性が育ち、自信がつきます。この経験はメンバーにとって、貴重な学びと自己成長の機会となります。
3. エヴァリュエーション (Evaluation)
例えば、写真クラブのリーダーが定期的に写真展を開催し、各メンバーの作品に対して具体的な評価と改善提案を行うことがあげられます。これによりメンバーは自らの技術を見直し、次のステップへ進むための動機づけがされます。
これらの3つのEは、クラブ活動においても非常に効果的で、メンバーがそれぞれの役割において成長し、クラブ全体がよりよく機能するように貢献します。
コロナによるリモート環境で3つのEが注目された!
ビジネスでは、この3つのE(エンゲージメント、エンパワーメント、エヴァリュエーション)は、2020年以降、感染症対策で行われるようになったリモートワーク(オフィスではなく自宅などで働くこと)でより注目されるようになりました。
リモートワークが始まったころ、同じオフィスにメンバーがいる対面ワークに比べて、リーダーからメンバーへのリーダーシップやメンバーどうしのコミュニケーション、またメンバーのやる気が低下する問題などが多く発生しました。
そこで、「よい人間関係・信頼関係づくり」「明確に任せること」「具体的な評価やフィードバック」の3つのEの重要性が増してきました。
リモート環境、対面での環境にかかわらず、この3つのEを意識すると、チームのコミュニケーションや成果が高まりますので、みんなで実践してみましょう!
客員教授聖心女子大学国際交流学科非常勤講師。福岡県生まれ。修猷館高校卒業。中央大学法学部卒業。BOND大学大学院 経営管理学修士課程(MBA)修了。パナソニック国内・海外部門にてシステムエンジニア、営業、マーケティング、企画、海外(香港)駐在など、リーダーシップ、マネジメントを経験。2002年、企業向け人材開発・コンサルティング会社EQパートナーズ(株)を設立。社長として同社を経営し、チーフコンサルタント・講師として、NTT、NTTドコモ、パナソニック、東芝、キオクシア、NEC、損保ジャパンなどで、経営者向け・次世代リーダー研修、女性リーダー研修、部課長・主任向けマネジメント研修などを多数実施。2005年より立教大学大学院ビジネススクールにて、リーダーシップ理論、起業家理論、交渉理論、修士論文指導などを担当。主な著書に『新版 課長の心得』『世界標準のリーダーシップ』(どちらも総合法令出版)、『World-Class Leadership』(World Scientific)