本記事は、安部 哲也氏の著書『13歳からのリーダーの教科書』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
リーダーの3つのふるまい方
リーダーに求められる3つのふるまい
リーダーの日ごろのふるまいは、リーダー自身の説得力や、誠意、熱意の証明につながります。リーダーの行動に必要な3つの要素を解説し、具体的な事例で説明します。
1. 率先して行動する
リーダーは言葉だけでなく、実際の行動でリーダーシップを示すことが重要です。率先してとりくむ姿をまわりに見せることで、メンバーのやる気や姿勢によい影響を与えるでしょう。メンバーはリーダーに影響され、自発的に動くようになります。
例えば、野球部のキャプテンが、練習で率先してランニングやバッティング練習をすることで、チームメンバーに「努力することの重要性」を示します。キャプテンが一所懸命に努力する姿勢を見て、ほかの選手たちもはげまされ、チーム全体のやる気が高まります。
2. 学び続ける
リーダーは絶えず学び続けることが大切です。新しい知識やスキルを習得し、いつも成長し続けると、リーダーシップの質を向上させることができます。
野球部のキャプテンで言うと、よりよい打法や作戦などを研究して、他のメンバーに学ぶ姿勢を示します。キャプテンの学ぶ姿に影響されチーム全体の学習意欲が向上します。
3. メンバーを見守り、長所・短所を知りいかす
リーダーはそれぞれのメンバーをよく観察したり、対話したりしてその長所や短所を理解することが大切です。それにより、チーム内の役割分担をうまく行い、メンバーの能力を最大限に活用することができます。また、メンバーの個性や意見を尊重し、協力的なチームをつくる手助けにもなります。
例えば、野球部のキャプテンは、チームメンバーの長所、短所をよく理解し、彼らが自分たちの力を最大限発揮できるようにします。守りは不得意でも、打撃が得意なメンバーにピンチヒッターを任せる、チームを分析して作戦を立てることが得意なメンバーには、作戦づくりを担当させることなどで、野球部はより長所をいかしたチームづくりができます。
3つのふるまいで共感を得られるリーダーへ
リーダーとしての3つのふるまいは、個人だけでなく、チームにも大きな影響を与えます。率先して行動し、学び続け、メンバーを理解し尊重することで、メンバーの共感を生み出し、協力を促進し、成功と成長に導くことができます。これらのリーダーシップを実践し、自身の成長とまわりへのよい影響をつくり出すことができます。
また、これら3つのふるまいは、リーダーだけではなく、メンバー全員にも求められることですので、みんなで実践してみてください。
リーダーシップとマネジメント
リーダーシップとマネジメントは違う!
「リーダーシップ」と「マネジメント」の考え方は、学校やクラブ活動でも参考となる考え方だと思います。
ハーバード大学のジョン・コッター教授は、「リーダーシップとマネジメントは別物である。リーダーシップは“変革する力”で、マネジメントは“管理する力”である」と説明しています。
より具体的には「リーダーシップはチームの向かう方向性を決めること、マネジメントはその方向性に向けてチームを運営・管理すること」です。
あなたは、“変革する力”と“管理する力”、どちらが得意でしょうか?リーダーには、リーダーシップとマネジメントの両方が求められています。どちらか1つが重要というものではなく、チームにとってはどちらも大切なものです。
スポーツでいうと攻めと守りのようなものです。スポーツでは攻めも守りも両方大切ですよね? 試合の状況から攻めを重視する場面と守りを重視する場面が出てくるでしょう。リーダーシップとマネジメントも状況に応じてどちらかをより強化すべきタイミングがあります。
リーダーシップは変革したり、方向性をつくり出す力です。新しいアイデアやビジョンをつくり、そこへ向けてメンバーを導いていきます。例えば、クラスで文化祭に出展する場合、ほかのクラスとは違った、これまでにはなかったよりよいものにするために、新しいアイデアや方針に挑戦していくのがリーダーシップです。
それに対して、出展の目的、方針に合わせ、予算を考えて、役割分担をし、計画を立てチームをきっちりとミスなく運営していくのがマネジメントです。
状況に応じてバランスをとることが大切
またコッター教授は、「現在の多くの企業やチームは、マネジメントが強すぎて、リーダーシップが欠けている」と言っています。つまり、計画や予算を立て、きっちりと運営していくことは行われていても、新しいアイデアやビジョンをつくり出し、変革していく力が不足しているということです。
特に日本の社会では、学校でもビジネスでも、マネジメントが重視され、リーダーシップが不足している傾向にあります。現状維持に重きを置き、変革できない組織やチームが多くなってしまっています。以前のようにまわりの環境があまり変化していない時代には、マネジメント重視でもよかったのですが、変化が激しい現在は、より変革するリーダーシップが求められるようになってきています。
「早く失敗しなさい!(Fail Fast)」という言葉があります。変化の激しい現在は、新しいことに早く挑戦し、失敗から学び、成長していくことが重要であるという考え方です。
リーダーシップとマネジメントはチームにとってどちらも大切ですので、状況に応じて使い分けましょう。場合によっては、リーダーシップを行う役割とマネジメントを行う役割とを分担をして、チーム運営を進めていくこともよいでしょう。
客員教授聖心女子大学国際交流学科非常勤講師。福岡県生まれ。修猷館高校卒業。中央大学法学部卒業。BOND大学大学院 経営管理学修士課程(MBA)修了。パナソニック国内・海外部門にてシステムエンジニア、営業、マーケティング、企画、海外(香港)駐在など、リーダーシップ、マネジメントを経験。2002年、企業向け人材開発・コンサルティング会社EQパートナーズ(株)を設立。社長として同社を経営し、チーフコンサルタント・講師として、NTT、NTTドコモ、パナソニック、東芝、キオクシア、NEC、損保ジャパンなどで、経営者向け・次世代リーダー研修、女性リーダー研修、部課長・主任向けマネジメント研修などを多数実施。2005年より立教大学大学院ビジネススクールにて、リーダーシップ理論、起業家理論、交渉理論、修士論文指導などを担当。主な著書に『新版 課長の心得』『世界標準のリーダーシップ』(どちらも総合法令出版)、『World-Class Leadership』(World Scientific)