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外貨預金や外国投資信託、外国株式など、為替の動向をどう読み解くかは損益において重要だ。しかし、米ドルと日本円の為替相場を予想するとき、ドル円為替レートだけを見る人は多いのではないだろうか。投資は、外貨両替とは異なるため、単にドル円レートで米ドルと日本円の力関係(今はどちらが買われているか)を計るだけでは充分とは言い難い。

なぜなら米ドルのように「世界の基軸通貨」に投資する際は、グローバルな視点で世界中の通貨に対して、どのような動きになっているかを把握することが重要だからだ。外貨投資に目を向けるならばドルインデックスも意識してみよう。

この記事では、ドルインデックスとその読み解き方について説明する。

ドルインデックスとは

ドルインデックスとは、ユーロ・円・ポンド・スイスフランなど複数の主要国通貨に対する米ドルの強さや価値を指数化したものだ。米ドルの総体的な価値を示し、ドルインデックスの数値が高いと主要通貨に対して米ドルが買われている(強い)ことを示し、低いと米ドルが売られている(弱い)ことを示す。

ドルインデックスは、複数の組織が、それぞれ独自の方針に則って算出しており、正式名称は各機関によって異なる。各組織のドルインデックスの違いは、構成する通貨の種類や割合などである。主なものは以下のとおり。

インターコンチネンタル取引所(ICE) 6通貨を対象
米連邦準備制度理事会(FRB) 26通貨を対象とし、実行為替レートをもとに計算
国際決済銀行(BIS) 約65ヵ国・地域の通貨を対象とし、実行為替レートをもとに計算

具体的な算出方法は各インデックスで異なるが、どの場合もインデックスに含まれるそれぞれの法定通貨に対して米ドルの強さがどうであるかではなく、すべてまとめた「バスケット」としての強さを表している。とはいえ、算出された数値が高ければ米ドルの価値(強さ)が高く、数値が低ければ米ドルの価値(強さ)が低いという関係はどれも同じ見方ができる。

構成通貨の数が異なると、どのドルインデックスを見れば良いか迷ってしまうかもしれないが、米ドルの大体の方向性を確認することが目的であれば、どのドルインデックスでも大きな問題は生じないだろう。

ドルインデックスはどう計算される?

ここからは、ICE(インターコンチネンタル取引所)のドルインデックスについて解説を進めていこう。ICEのドルインデックスは、他のインデックスと違ってリアルタイムで更新されることもあり、外国為替市場の取引参加者が最も目にするドルインデックスだ。もともとは、1973年にFRB(米連邦準備理事会)によって開発されたが、現在はICEが算出している。

インデックスを構成する通貨は、米国との主要貿易相手国の6つの通貨である。

通貨 比率
ユーロ 57.6%
日本円 13.6%
英ポンド 11.9%
カナダドル 9.1%
スウェーデンクローナ 4.2%
スイスフラン 3.6%

ちなみに、欧州統一通貨のユーロができる以前は他の5つの欧州通貨は含まれていたが、これらがユーロに置き換えられたこともありユーロの構成割合が高くなっている。 計算式は以下のとおり。

・50.14348112×ユーロ/米ドル-0.576×米ドル/日本円0.136×英ポンド/米ドル-0.119×米ドル/カナダドル0.091×米ドル/スウェーデンクローナ0.042×米ドル/スイスフラン0.036

計算式は難しいが、先物としても上場しているため、チャート分析ツールで確認するといいだろう。

ドルインデックスで何がわかる?

ドルインデックスは、それ自体を取引することもできるが、為替予測などに活用することもできる。例えば、昨今のドル円では「ドル高円安」傾向が続いている。しかしこのドル高円安が「米ドルが買われていることによるドル高円安なのか」それとも「日本円が売られていることによるドル高円安なのか」を見極めることは投資をするうえで重要であり、それを見極めるツールの一つがドルインデックスなのである。

ドル高円安が進んでいる最中、ドルインデックスが上昇していたとしよう。ドルインデックスが上昇するということは、米ドルが、日本円を含めた世界の主要通貨に対して買われているということだ。この場合は「米ドルが買われている(強い)ことによるドル高円安」と言える。

しかし、ドル高円安が進んでいる最中、ドルインデックスが下降していたらどうだろうか。ドル高円安が進行していても、米ドルに対して日本円以外の主要通貨が上昇すれば、ドルインデックス指数は下降してしまうのだ。この場合、日本円以外の主要通貨に対してはドル安だが、その米ドル以上に日本円が売られているので「日本円が売られていることによるドル高円安」と言える。

また、ドルインデックスが横ばいにも関わらず、ドル円為替レートが大きく変動するパターンも想定できる。このように、ドル円為替レートを見ると同時に、ドルインデックスも確認すれば、このドル高円安の背景をうかがうことができ、「ドル高が主因なのか」それとも「円安が主因なのか」を判断しやすくなる。

行き過ぎた円安と言われるなかで、介入と思われる為替動向の急転換や2024年8月はじめの米国景気悪化懸念による米ドルの急転落など、為替レートの変動が激しさを増している。だからこそ、ドルインデックスでその背景を知ることは今後の為替レートの予測に役立つだろう。

なお、ドルインデックスは基本的に米ドル円との相関関係があるが、時間帯によっても相関関係の強弱が変わることには注意したい。一般的に、米ドルの取引が活発になるニューヨーク時間に相関関係が強くなりやすいと言われている。これは、ニューヨーク時間では日本円の価値があまり変わらず、通貨の価値の変動が米ドル中心になりやすいからだ。

ドルインデックスはなぜ重要?

ここでは、ドルインデックスがなぜ重要なのか、その主な理由を整理しておこう。

  • 世界経済に与えるインパクトが大きい
  • 為替レート予測に活用できる

1つ目の世界経済に与えるインパクトであるが、世界通貨のなかでも米ドルは貿易や石油、金融などあらゆる取引において最も取引量が多い。そのため、米ドルの価値の変動は単に米国経済だけでなく世界経済の動向や他の通貨へも大きな影響を与えることになる。また、外貨建て商品への投資に必要不可欠な為替レート予測をするうえでその背景を知ることが重要なのは前述したとおりである。

「変動の主因が通貨ペアのどちらにあるのか」を判断することにより、為替レートの予測に役立ち、大きく的を外さないことが挙げられる。例えば、このドル高円安の主因が円安だったとしよう。しかし、ドルインデックスをしっかり確認しないと「何かのニュースで積極的にドルが買われたのではないか」と誤った認識をしてしまうかもしれない(この場合、確かにドルは買われたが「積極的に」買われたわけではない。あくまで円を手放した資金の受け皿となった結果である)。

円安に主因があるのに、積極的にドルが買われたニュースを探し続けるのは、大きく的を外したマーケット分析と言わざるを得ないだろう。「変動の主因が通貨ペアのどちらにあるのか」を把握したら、次はその要因が「今後も継続的に続きそうか」もしくは「もうすぐ効力を失いそうか」を判断しよう。

継続的に続きそうだったら、その為替トレンド(上記の例ではドル高円安)も続く可能性が高い。反対に、もうすぐ効力を失いそうであれば、その為替トレンドは止まるか反転する可能性が高いと言えだろう。

ちなみに、一般的に「ドル安・円高」「ドル高・円安」などと言われるが、いつの時点をもってドル安またはドル高というかについても理解しておこう。ドルインデックスは、スタート時の100を基準値としており、100から上昇(ドル高)、下降(ドル安)というラインがある。

しかしドル円の変動に起因する投資損益においては、あくまで購入する時点と売却する時点の差によるため、投資家ごとに基準値が異なる。ニュースなどの情報を参考にする際には「前日と比べて」「この1年間で」「○○の時点と比べて」という基準もあわせて確認することが大切だ。

また投資においては、一つの情報だけに頼るのではなく他のドルインデックスもあわせて確認することも必要だろう。

ドルインデックスでドル円相場の背景を知ろう

為替変動により損益を見込む外貨投資では、2国間の為替レートだけでなくドルインデックスを参考にするのが有効だ。ただし構成通貨の割合と動向を頭に入れて、ドルインデックスを見ることも大切だ。

実際にすべての通貨の動向を広く深く観察するのは容易ではない。しかし、まずは「米ドルが売られて(買われて)いることによるドル安円高(ドル高円安)なのか」それとも「日本円が買われて(売られて)いることによるドル安円高(ドル高円安)なのか」など、変動の奥にある要因を見極められるようにしたい。

(提供:大和ネクスト銀行


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