人民元見通し
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「人民元は景気減速でも対ドルで安定だが、減速は他国の通貨に影響する」人民元見通し

(通貨3位、株価19位)

予想レンジ 人民元/円 19.7-20.2

(ポイント)
*人民元は景気減速でも安定だが、減速は他国の通貨に影響する
*人民元は年初来3位も、円との差は急速に縮まっている
*中国はデフレ圧力との闘いに注力すべき=人民銀行前総裁
*デフレとの闘い続く
*8月貿易、輸出は駆け込みで増加、輸入は内需低迷で伸びず
*中国の外貨準備の運用は謎
*緊張関係にある台湾はAIで好況
*人民元と金利は管理相場、株価は放置政策で弱い
*金融緩和観測強まる
*習政権の経済政策に批判も、当局は記事を削除
*若年失業率、7月は17.1%に上昇
*トランプ次期大統領候補は中国に60-100%の追加関税を課すと発言
*G7首脳、中国過剰生産に懸念表明
*中国の米国債保有額、2009年ぶりの低水準に

(人民元は年初来3位も、円との差は急速に縮まっている)
 人民元は年初来、3位に位置している。対ドルでは年初来安定しているが、7月の日銀の円買い介入以来、対円で12.08%高あった差が、現在はわずか0.66%高となり、いつ逆転されてもおかしくない位置にある。
株価は相変わらず弱い。上海総合指数は年初来8.51%安、香港ハンセン指数は0.36%高。10年国債利回りは景気減速で低下しているが、人民銀行は急速な低下を抑えるために国債売却も行い2.104%である。

(豪ドルやNZドルの下げを誘発)
 中国景気が減速しているが人民元は半ば管理相場なので安定している。ただ中国景気の減速は中国を第一の輸出先として、またその比率が高い豪やNZの通貨を安くしている。

(デフレとの闘い)
 8月の消費者物価は前年比0.6%上昇し、半年ぶりの高い伸びだった。天候不順による食品価格の値上がりが要因。7月は0.5%上昇、予想は0.7%上昇。
 8月の生産者物価はは前年比1.8%下落。前月は0.8%下落、予想は1.4%下落。
 予想より弱い内容でデフレ懸念を緩和するものではなかった。政府の消費喚起策は影響が浸透するまでに時間がかかる。需要が物価を押し上げる状況がまだ視界に入っていない。

(8月貿易、輸出は駆け込みで増加、輸入は内需低迷で伸びず)
 8月の貿易統計は910.2億ドルの黒字となった。7月は846.5億ドルの黒字。
輸出が前年比8.7%増と約1年半ぶりの高水準となる一方、輸入は0.5%増にとどまった。多くの輸出先で関税発動が見込まれることから製造業者が受注を急いでこなした可能性がある。
 輸出の伸び率は7月の7.0%から予想の6.5%を上回った。輸入は内需低迷を背景に7月の7.2%増から大幅に鈍化し、予想の2%増も下回った。
8月の対米貿易黒字は338.1億ドルと、7月の308.4億ドルから拡大。

(中国の外貨準備の運用は謎だ)
 8月末の外貨準備高は前月比318億ドル増の3兆2880億ドルと、2015年12月以来、約8年半ぶりの高水準となった。
 日本は1兆2357億ドル。日本の殆どは米国債購入だが、中国のそれは8000億ドル、残り2.4兆ドルは何処に?運用の内訳の資料は公表されていない。

(中国はデフレ圧力との闘いに注力すべき=人民銀行前総裁)
 人民銀行前総裁の易綱氏は、中国はデフレ圧力との闘いに注力すべきだと述べた。
易氏は「名目GDPを見ればプラスだが、人民の所得や税収にも目を向ける必要がある」と述べた。「キーワードは内需をいかに改善するか、不動産市場の状況や地方政府の債務にどう対処できるかだ」と指摘。人々にとって重要なのは雇用の将来と収入の見通しだとした。
 「全体的に内需が、特に消費と投資の面で弱いという問題があり、積極的な財政政策と緩和的な金融政策が必要だ」とも訴え、「当面の焦点はGDPデフレーターをプラスに転じさせることだ。それが難しいことだと分かっていても最善を尽くすべきだ」と語った。
 市場関係者は、9月の米利下げが確実視されているため、中国人民銀行の金融緩和余地が広がると指摘。JPモルガンは今年4Qと来年1Qに各10ベーシスポイント(bp)の利下げがあると予想している。