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現在までの事業変遷について
ーI-ne社の事業の変遷について、特に大きな転換点だと思われるポイントをいくつかご紹介いただけますか?
株式会社I-ne 取締役兼執行役員CFO・原 義典氏(以下、社名・氏名略) 弊社は、2005年に代表の大西が個人事業主としてアパレルを通販事業で始めたのが最初です。そして、2007年にビューティーブランドのモバイル通販事業という形で、I-neを設立しました。
その後、もともとビューティーやアパレルでトレンドに乗っていた弊社は、モバイル通販がまだ大きな事業でないときから、代表の大西が積極投資をしてデジタルで認知を獲得し、その後オフラインにも創業メンバーが営業をかけることによって、オフラインにまで流通できるようなOMOモデルを確立していきました。
その中で、特に大きな転換点は、2015年に「BOTANIST」を出したことだと思います。ご存知の通り、シャンプー市場には強力な競合ブランドが数多く存在し、レッドオーシャンと言える状態でした。しかし当時、オンラインでプレミアムマスと呼ばれるような商品を売っているブランドはなく、さらにボタニカルを売りにしているようなブランドもなかったので、その中で弊社はブルーオーシャンを作り出すような形で事業を展開しました。
ーなるほど、ヒットブランドの誕生がターニングポイントだったわけですね。御社の強みと言えるポイントはどこでしょうか?
原 弊社の強みは、サイエンスとアートを組み合わせて、KPIに対して再現性を高めながら、半歩先のコンセプトメーキングをしていくという考え方で、美容開拓層や先進層だけではなく、マスにもしっかり届くようなコンセプトを生み出し、ブランド展開をすることでヒットを生み出すことが強みです。
また、デジタルマーケティングとオフラインの配荷力両方をもっていること(OMO)が大手企業や新興の企業と比べて独自の強みといえます。
独自のブランドマネジメントシステムである「IPTOS(イプトス)」を開発し、規律を持ってイノベーションを起こせる体制も作ってきました。その中で生まれたブランド「YOLU」や「DROAS」などが、従来の増収増益に貢献しております。
御社における原様の役割について
ーI-ne社におけるご自身の役割の変化や、現在取り組んでいることについてお聞かせいただけますでしょうか。
原 前職では、シンガポールや日本でファイナンスキャリアを歩んできました。次は、再び海外へと話をしていた時にコロナになり、異動のタイミングが読めない状況になりました。そんな中、CFO候補を探していたI-neとのご縁があり、社長を含めた執行役員の方々と会社のMissionや期待される役割を議論させていただき、今回の役割をお受けしました。
入社後は、成長過程のベンチャー企業として、中期計画や戦略を立ててMissionを達成しながらビジネス成長をするにはどうすればよいか経営陣や現場を巻き込んで議論をさせていただきました。その中で、私が貢献できたと思うのは、それぞれの事業のビジネスモデルを理解し、リスクを把握しながら、戦略的に投資配分を行い、持続可能な売上・利益の拡大ができる成長戦略創りに注力してきたことです。また、プライム上場前に発表した中期経営計画発表にも入社直後からかかわり、あらためてI-neの強みの定義などの整理を行い、投資家の皆様にわかりやすくI-neの強みや成長戦略をお伝えするストーリー作りにも関わりました。
私自身は、もともと本部長代理としてファイナンス領域のみ担当でしたが、その後執行役員になって管理本部全体を見るようになりました。今は、管掌範囲はさらに増えましたが、管理本部をファイナンスIT本部、法務コンプライアンス本部、コーポレートディベロップメント室という形で分け、専門性を持った役割分担ができるような組織に再編して、ビジネス成長をささえるバックオフィス組織へと変革をしている最中です。
ービジネスモデルを理解しながらの戦略創りは、P&Gでのブランドリーダーの経験が生きているのでしょうか。
原 そうですね。ブランドリーダーとしての経験や、アジア本社での戦略策定・実行の経験によってビジネスモデルについての理解が深まりました。持続的な成長のためには、戦略的に投資をしていくことが重要で、利益を生み出して再投資に回す方法を考えることが求められます。そういった経験を活かし、I-neの強みを生かした状況で、社内のカルチャーを守りつつ、さらなる成長を目指しています。
原様が意思決定の際に重要視をしている点について
ーそれにしても、まだ2年しか経っていないのに、すでにここまで落とし込まれているのは本当にすごいことだと感じます。
原 まず、入社2年でいろいろなことにチャレンジできたのは、I-neのカルチャーが非常に独特で強いからだと感じています。私たちのミッションは、社会を美しく変えるために、社員一人ひとりが成長し、イノベーションを起こして結果を出すことです。また、Innovate、 Commit、 Respectという3つのValueを大切にしており、 お互いを尊敬し、Missionや目標を達成するためにお互いを高め合うことが大切だと思っています。
ーそうした企業文化の中で、意思決定の際に特に重視されているポイントは何でしょうか?
原 一番は、何がI-neの強みか、I-neだからこそ持続的に勝てる戦い方ができているか、を重要視しています。やはり前職とは戦い方も強みも異なりますので、I-neの良さや強みを活かすことを第一に考えて、その上でリスクテイキングの幅をCFOという立場から判断しています。
ー 今後、さらにブランドを伸ばしていくために、どのようなことを意識されていますか?
原 やはり、組織が大きくなればなるほど、人も増えますし、過去の強みをどこまでブラッシュアップしてスケールできるかが重要だと思っています。また、ブランドを拡大する中で、さまざまなブランドを出していくことで、各チームの判断基準をどのようにしていくかということが大事だと考えています。
ーそれでは、人材育成に関してはいかがでしょうか?
原 アイデアが生まれヒットを量産できるような体制をつくるための人材育成が必要だと思っています。
他社と比べてクリエイターの人数が多い会社だと思っていますので、組織ごとに育成プログラムを作っています。私の担当のCFO傘下では、外資系ファイナンスFP&Aと日系企業の経営企画の良いところを混ぜて最適な形で、スキルセットやキャリアパスを作り、イノベーションを起こし成長をサポートできる体制をつくっています。
ー海外展開において、今後のポイントは何だと思いますか?
原 難しいところでは、どのように消費者のトレンドをキャッチするかが大きなポイントだと思います。例えば、中国やアメリカでは、現地の消費者の近くでトレンドをキャッチすることが難しかったり、チャレンジングであったりします。それを解決するために、現地で人を採用して、現地に合ったオンラインマーケティングができるようにしています。今後は、さらにその知見を深めていくことが重要だと考えています。
原様の思い描いている御社の未来構想について
ー今後の御社の展望についてお聞かせいただけますか?
原 私が入社した理由でもあるのですが、I-neという会社はただ目標を追いかけるだけではなく、ミッションである「Chain of Happiness」つまり幸せの輪を広げながら、その結果として売上利益や企業価値を上げていくことを重視しています。その中で「Chain of Happiness」とは、消費者であるお客様、取引先パートナー、社員、そして地域社会という形で、ESGのコンポーネントを含めて、この規模の会社でサステナビリティやガバナンスをしっかりと実行しながら、2桁の成長を達成していくことを目指しています。
長期的には、28年から30年の間に売上高1,000億円、営業利益15%を達成したいというビジョンを持っています。ただ、売上や利益だけでなく、「Chain of Happiness」やESGのコンポーネントもすべて達成するというのは非常に難易度が高いと思いますが、それをどうやって実現していくかを真剣に考え、企業として成長していくことが大事だと考えています。
ーチャレンジングな目標を達成する上で、ファイナンスという手段があります。上場されて資本市場にアクセスが可能になり、選択肢が広がっていると思いますが、御社の今後の成長を導く上で、ファイナンスに対する考え方をお聞かせください。
原 現在は、M&Aに伴い100億ほどの借り入れを行いました。しかし、財務のバランスを見ても調達余力としては非常に力があると思っています。今後も、エクイティでもレバレッジをどう活かしていくかというのが、先ほど言ったビジョンを達成するために非常に重要です。
投資としては、ブランド投資や原価投資は当然していくのですが、弊社だけではなく、「Chain of Happiness」を一緒に達成できる企業様とのアライアンスや資本提携など、どのように進めていくかが大きな鍵だと思います。
ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言
ー投資家の皆さんに向けて、御社のどの部分をもっと注目してほしいと思いますか?また、まだあまり気づかれていないけれど、ここが強みだという点があれば教えてください。
原 まだまだI-neという社名自体が浸透しているわけではなく、個別ブランドである「BOTANIST」や「SALONIA」というブランド名の方が聞き馴染みがあると思います。一方で、弊社は「BOTANIST」や「SALONIA」といった主力ブランドもしっかり成長させつつ、「YOLU」をはじめとする新しいブランドをしっかり出しながら、大きくすることができている会社だと思っています。安定的な成長もありながら、大きく2桁成長も十分にできる、成長可能性が非常に高い会社だと私個人としては思っています。
その中で、ヘアケアや美容家電という分野を成長させてきており、その後第三の矢であるスキンケアや他のカテゴリーも弊社の強みでこれから出していくので、そこを見ていただければ、まだまだ企業価値が上げられる会社だと思っていただけると思います。また、四半期ごとにボラティリティがあると言われることもありますが、実際には半期ごとにはしっかりと成長しておりますので、その部分もしっかり見ていただいて、通年でで成長している会社であることをお伝えしたいと思っております。
ーなるほど、それではもう一点、知られていない強みについて教えていただけますか?
原 もちろんです。知られていない強みとしては、I-neの強みである半歩先のコンセプトと、オンラインとオフラインでのデジタルとドラッグストアの連携が非常に強い会社であることです。
ビューティー市場において、イノベーションを起こしてブルーオーシャンを作れる会社であると思っています。直近で言うと、目薬の「Tearal(ティアラル)」という商品を出しまして、こちらも非常に好評いただいております。目薬でデザイン性を持たせるということは過去にあまりなかったと思いますが、そういった形で、実はヘアケアだけの会社ではありません。弊社の強みを生かして、イノベーションを起こしてブルーオーシャンを作り、成長させていくということをやっていきたい会社であることをお伝えしたいと思っております。
ー本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございます。
- 氏名
- 原 義典(はら よしのり)
- 社名
- 株式会社I-ne
- 役職
- 取締役兼執行役員CFO