本記事は、小田 玄紀氏の著書『デジタル資産とWeb3』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

デジタル資産とWeb3を自分事にする
1990年代にインターネットが登場した際、「なんだかよく分からない」「リスクがありそう」と敬遠する人もいました。しかし、いまでは誰もが当たり前のように利用しています。
デジタル資産とWeb3も同じです。まだ不透明であったり曖昧だったりする部分がありますが、いずれ私たちの日々の生活や資産形成、ビジネスなどに不可欠な存在になるでしょう。
そうであれば、まずは知ること、触れてみることが大事であり、そこからさらに自分に合った付き合い方を探してみるべきです。それがデジタル資産とWeb3の時代における生存戦略です。
現時点では、日本におけるデジタル資産とWeb3の認知度はいま一歩の段階と言わざるを得ません。
暗号資産ウォレットである「メタマスク(MetaMask)」を開発するブロックチェーン企業のコンセンシスが、世界18カ国1万8,000人以上を対象とした2024年版の暗号資産・Web3に関する調査結果を発表しました。

日本では暗号資産の認知度は2023年比で7ポイント増の88%に達したものの、世界平均の93%には及びません。76%が暗号資産の購入経験がなく、今後1年以内の投資意向も19%にとどまっています。市場参入の主な障壁として、53%がボラティリティを、40%が知識不足を挙げていました。
さらに残念なのがWeb3の認知度で、わずか9%と調査対象国中で最低水準でした。NFTについても認知度は14%と低く、前年の13%からほぼ横ばい。
ただ、認知している人の間では具体的な活用が進んでいます。Web3を知る層における主なアクティビティは、ブロックチェーンゲーム(26%)と、次に触れる暗号資産のステーキング(24%)が上位を占め、22%が過去1年間に取引の送受信を経験していました。
少額から投資してみる
こうした状況を踏まえ、デジタル資産とWeb3を自分事にするため、まず提案したいのは少額の余裕資金で投資してみることです。
こういうと、「多少調整したとはいえ、この1年でものすごく値上がりした暗号資産を買うのはもう遅いのではないか」と思われるかもしれません。たしかに2025年3月下旬の時点で1BTCは1,200万円ほどします。これからなお調整があるかもしれません。
しかし、特にビットコインについていえば、2010年に登場してから15年、アップダウンを繰り返しながらも基本的に右肩上がりに上昇してきました。今後についても、アメリカのトランプ政権の〝推し〞や日本でのETF登場予想などを踏まえると、中長期的には底堅い動きをするのではないでしょうか。
「もう遅い」と決めつけるのは「まだ早い」です。まとまった資金を一度に投資するのではなく、積立てで毎月、数万円ずつ購入していくやり方であれば、さほど心配はいらないと思います。また、まだ割高だと思えば暗号デリバティブ(証拠金取引)を提供している交換業者を使って、ショート(売り)から入ることもできます。
ビットコインの最小取引単位はプログラム上、0.00000001(1億分の1)BTCとなっており、ナカモトサトシにちなんで「サトシ」と呼ばれます。1BTCが1,200万円であれば0.12円です。国内の暗号資産交換所ではもう少し大きく、100円程度から購入できます。
ただし、ビットコイン以外の暗号資産については、基本的に国内で登録している交換業者が取り扱っている暗号資産かどうかを確認することをお勧めします。少なくとも国内市場において一定の実績と信用のある暗号資産を選んでいるからです。
交換業者で口座を開設するのは無料で、口座維持にも手数料はかかりません。現在、登録交換業者は33社あります。
「ステーキング」という新しい投資法
暗号資産への投資も、基本は安く買って高く売ること、いわゆる「キャピタルゲイン」が狙いです。
それに加えて最近、新しく登場したのが「ステーキング」という投資法です。やり方は簡単。イーサリアムなどコンセンサスアルゴリズムとしてPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用している暗号資産を購入し、専用のウォレットに入れて暗号資産交換所に預けておきます。すると、暗号資産交換所ではそれを利用してブロックチェーンの運用(PoS)に参加。その報酬が還元されるという仕組みです。銀行に預金すると金利が付くのと同じようなもので、「インカムゲイン」といえます。

日本人は銀行預金など安定的に金利が入ってくる商品を好む傾向があり、暗号資産のステーキングは日本人との相性が良いと思います。

1980年生まれ、東京大学法学部卒業。2016年3月、日本初の暗号資産交換業を営む株式会社ビットポイント(現 株式会社ビットポイントジャパン)を立ち上げ、同社代表取締役に就任。
2018年、紺綬褒章を受章。2019年、「世界経済フォーラム」よりYoung Global Leadersに選出。
2023年から、SBIホールディングスの常務執行役員、日本暗号資産等取引業協会代表理事を務める。