本記事は、小田 玄紀氏の著書『デジタル資産とWeb3』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

ゴールドに代わる価値の保存方法、暗号資産
(画像=Girly Goatee / stock.adobe.com)

暗号資産の「価値」はどこから来るのか?

ビットコインをはじめ暗号資産の「価格」はこれまで乱高下しており、ボラティリティが高いのは事実です。しかし、価格の動きにだけ注目していると暗号資産の「本質」を見誤る可能性があります。暗号資産の「価格」と「価値」は別と考えたほうがよいのです。

暗号資産の「価値」とは、何より非常に多くの人が保有しているということです。口座数は日本だけでも1,200万以上、世界では6.5億口座にまで拡大したと推定されています。

そもそもビットコインをはじめ暗号資産の実体はデジタルデータです。物質的な裏付けがなく、日本の民法では所有権の対象とはなりません(所有権の対象は「有体物」に限られるため)。それでもビットコインは現在、1BTC=1,250万円ほどの高値で市場において取引されています。

これは端的に言えば、「それ以上の価格で次に買う人が出てくるだろう」と考える人がいるからであり、もし「この先、誰も買う人はいないだろう」とあらゆる人が考えれば資産価値はゼロになるでしょう

この理屈は、円をはじめ現代の法定通貨にもあてはまります。かつては金本位制といって金との交換が約束されていましたが、いま1万円紙幣の原価は1枚20円弱です。それでも日常生活において日本人は、「1万円」の価値があるものとして使っています。それを保証しているのは、徴税権や金融システムなどの国家の権限です。

しかし、いわゆるハイパーインフレになって「今日1万円札1枚で買えたものが、明日は2枚必要になるかもしれない」と多くの人が考えるようになれば、1万円札の価値は瞬く間に暴落するでしょう。

その点、暗号資産の資産価値は、法定通貨のように国が保証しているからではなく、取引市場において多くの人が「それだけの資産価値がある」と考えていることが裏付けとなっています。国家の権限と市場の裏付けという違いはありますが、いずれも「信用」が支えているのです。

特にビットコインについては、プログラムによって発行上限が2,100万枚にあらかじめ制限されています。2,100万枚のうちすでに1,980万枚が発行されていますが、2,100万枚の上限に到達するのは2140年頃です。上限に達すると新たなマイニング報酬はなくなり、BTCの新規発行はストップします。

デジタル資産とWeb3
(画像=デジタル資産とWeb3)

このように発行上限が決まっていることも、ビットコインの信用につながっているといえるでしょう。

実際、アメリカのトランプ大統領が2025年3月に署名した暗号資産を国家備蓄する大統領令でも、ビットコインとその他の暗号資産を別扱いすることとしています。

同じ「備蓄」といってもビットコインは「Reserve」と位置づけられ、これまでアメリカ政府が違法取引などから没収した約20万枚のビットコインは売らずに持ち続けるだけでなく、追加的に取得する可能性もあります。一方、その他の暗号資産は「Stockpile」と位置づけられ、追加取得はせず、必要に応じて売却することもあります。

今後、ビットコインとそのほかの暗号資産については、こうした扱いの差が広がるように思われます。つまり、ビットコインは金融商品としての性格をさらに強め、その他の暗号資産はWeb3などで利用されるトークンとしての位置づけになっていくのではないかということです

デジタル資産とWeb3
小田 玄紀 (おだ・げんき)
SBIホールディングス常務執行役員、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)代表理事、株式会社ビットポイントジャパン代表取締役。
1980年生まれ、東京大学法学部卒業。2016年3月、日本初の暗号資産交換業を営む株式会社ビットポイント(現 株式会社ビットポイントジャパン)を立ち上げ、同社代表取締役に就任。
2018年、紺綬褒章を受章。2019年、「世界経済フォーラム」よりYoung Global Leadersに選出。
2023年から、SBIホールディングスの常務執行役員、日本暗号資産等取引業協会代表理事を務める。
デジタル資産とWeb3
  1. 暗号資産の「価値」はどこから来るのか?
  2. これだけは知っておきたい「デジタル資産」と「Web3」の定義
  3. ブロックチェーンのこれまでの経緯
  4. そもそもWeb3とは何か?
  5. 銀行を信用するか、テクノロジーを信用するか
  6. デジタル資産とWeb3を自分事にする
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