AI（人工知能）の進化にともない、それを支えるインフラへの投資が急速に拡大しています。特に、大手企業や各国政府の積極的な投資が市場の成長を後押ししています。本記事では、2028年までに市場規模が2,000億ドル（約29兆6,000億円）に達すると予想されている、AIインフラへの最新投資動向と成長要因、そして今後の展望についてレポートします。
AIインフラ市場の成長と事例
AIインフラとは、AIや機械学習（ML）、クラウド向けに特化したハードウェアやソフトウェアの総称で、高性能プロセッサ（GPU・TPC）やデータセンター、サーバー、大容量ストレージなどが含まれます。以下、最新の市場成長動向と投資事例について見てみましょう。
市場の急成長
AIインフラ市場はかつてない勢いで成長しており、2019年以降は年間二桁の成長率を維持しています。国際アドバイザリー企業IDCの最新調査結果によると、世界のAIインフラ市場規模は2028年までに2,000億ドルを超える見込みです。
企業・政府のAI導入とインフラ投資
近年、AI技術の進化とともにその活用範囲が広がり、競争力の強化やコスト削減を目的にAIを導入する企業が増加しています。AIを導入するにあたり、大規模なデータ処理能力と演算能力を支えるインフラが不可欠であることから、その整備への投資が活発化しているのです。
・Apple
今後4年間で米国内に5,000億ドル（約74兆円）を投じ、AIインフラと人材育成を強化する計画を発表しました。この中には、自社データセンターの拡張・先進的サーバー製造施設の建設・2万人の新規雇用が含まれています。
・MicrosoftやBlackRock
AIインフラ投資を目的とするパートナーシップを結成。データセンター及び電力インフラの強化に焦点を置いており、投資規模は最大1,000億ドル（約14兆円）に達する可能性があります。
また、各国政府の投資も加速しています。最近では、米国とEUがそれぞれ5,000億ドル、2,000億ユーロ（約32兆円）規模のAIインフラ計画、英国がAIインフラ計画の加速を目的とするアクション・プランを発表しました。
急成長の要因は？
AIインフラ市場が急成長している要因は主に2つ。1つ目は、生成AIの普及です。生成AIはコンテンツ生成やデータ解析を行う高度なAI技術で、画像・文章の生成・分析・さらには自動車運転やロボット制御などのさまざまな分野で活用が進んでいます。このような需要の高まりを受け、それに対応するためのインフラが急速に拡大しているのです。
2つ目は、データセンターやクラウドサービスの拡大です。近年、AI技術の進化とともにその活用範囲が広がり、競争力の強化やコスト削減を目的にAIを導入する企業が増加しています。企業がAIを導入するにあたり、大規模なデータ処理能力と演算能力を支えるインフラ整備への投資が不可欠です。このような背景から、データセンターの規模・処理能力を向上させるための投資が活発化しています。
今後の展望は？
さまざまな要素が追い風となり、さらなるAIインフラ市場成長が期待されています。特に以下ような要因が重要な役割を果たすと予測されており、今後の投資動向にも影響を与える可能性があります。
次世代データセンターの進化
現在のデータセンターは、電力消費・冷却技術・セキュリティなどの課題を抱えており、解決に向けた新たな技術が求められています。次世代データセンターでは、液侵冷却技術（※1）や再生可能エネルギーの活用による電力効率の向上、ゼロトラストセキュリティ（※2）に基づくセキュリティ強化など、多様な対策が講じられています。このようなデータセンターが普及することにより、市場の成長がさらに加速するでしょう。
（※1）IT機器を液体に浸して冷却する技術のこと。
（※2）ネットワーク内外を問わず、あらゆるアクセスを検証することにより脅威を防ぐという概念のこと。
半導体技術の革新
AI技術の進化には半導体技術の革新が不可欠です。現在、IntelやNVIDIAを筆頭とする多数の企業が専用チップの開発に注力しており、処理速度やエネルギー効率の大幅な向上が期待されています。実現すれば、AIの普及範囲がさらに拡大し、インフラの持続性が高まることから、市場成長に大きく貢献することが予想されます。
規制強化・環境負担の軽減
AIインフラの成長にともない、環境負担を軽減するための技術や規制も重要な要素となります。AIの処理は大量のエネルギーを必要とするため、今後、エネルギー効率の高いインフラの構築や規制整備が課題となるでしょう。
一方で、プライバシーやセキュリティに関する規制の強化も予想されます。すでに欧米やカナダ、中国などの一部の国において、そのような動きが見られます。今後は、より包括的で国際的な規制フレームワーク作りが進む可能性も考えられます。
新たな投資のチャンスに期待
大手企業・各国政府による大規模なAIインフラ投資が継続する一方で、スタートアップの台頭などさまざまな要素が新たな投資チャンスをもたらすことが期待されます。Wealth Roadでは、今後もインフラ投資を含むAI市場動向をレポートします。
※為替レート：1ドル＝148円 1ユーロ＝160円
※本記事は投資に関わるAIインフラを解説することを目的としており、個別企業への投資やAIインフラへの投資を推奨するものではありません。
（提供：Wealth Road）
