本記事は、岡田 祐子氏の著書『ポイントサービス3.0 エンゲージメント時代のポイント戦略』(中央経済社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ロイヤルティからエンゲージメントへ
~「ポイントサービス3.0」への大転換
すると、企業⇔顧客間(BtoC)は、企業への顧客のロイヤルティ(忠誠心)醸成という文脈で語れますが、上記のような多種多様な関係性において、特にビジネス(BtoN)以外の関係性の場合は、多少異なる文脈上にあることが明らかになってきます。
関係性強化という場合、自治体は地域住民に、国は国民にロイヤルティ(忠誠心)を求めているわけではなく、念頭にあるのは「エンゲージメント」、言い換えると、愛着心や深い信頼関係といったようなものでしょう。まとめると、以下のように整理されると考えます。

2.0時代には、企業⇔顧客間におけるロイヤルティプログラムと定義されたポイントサービスが、企業⇔顧客間だけではなく、関係性を構築したい多種多様なプレーヤー間における「エンゲージメント」(愛着心、深い信頼関係)を醸成していく仕組みへと進化していく流れがつかめると思います。よって、新たな「ポイントサービス3.0」とは「エンゲージメントプログラム(Engagement Program)」と定義できるのです。
3.0時代になると、あらゆる関係性は対等となり、だからこそ主従の忠誠心ではなく、双方の愛着心や信頼関係の醸成が重要となってくる。CRM(顧客関係性管理)の考え方においても、企業と顧客の関係性は対等に近くなり、その関係性を互いに育んでいくような形へと変貌していくと考えられます。
たとえば、近年注目されている「パーパス経営」も、企業の社会における存在意義を明確にし、社会に対してどのような価値を創造し実現するのか、その「志」や「信念」をベースに、従業員やわれわれ生活者、すなわち社会の構成メンバーに対し、対等の信頼関係を築いていくような思想であり、中核にあるのは、まさにエンゲージメントの考え方です。
創り出したい価値を創り守りたい価値を守るポイント
このエンゲージメントという発想は、ビジネスだけでなく、というよりビジネス以上に、社会課題などを解決するさまざまな活動とそのプレーヤーにとって、要となるものだと考えます。もちろん、環境や福祉のようないわゆる社会課題然としたテーマだけでなく、私たちが大切にしたいと思っている、こだわりのあるモノ、人、団体、体験、趣味趣向、すなわち文化全体にまで及ぶものなのです。
「日本酒マイル」のような世界観。あれも、酒蔵、世界に冠たる日本酒を創り出す地場産業という、価値ある文化を守るためのささやかな試みと楽しみが実を結んだものなのです。そして、人口減少時代だからこそ、創り出したい価値を創り、守りたい価値を守ることが、ますます重要になってくると考えます。その意味で、企業活動はじめさまざまな社会活動が、ポイントサービスを媒介に発展していく姿が、ポイントサービス3.0時代なのだといえます。
思い返せば、紙スタンプから始まり、ポイントカード、モバイル、スマホアプリと、長い変遷をたどってきたポイントサービス。デバイスは、術革新とともに常に変化してきましたが、「ポイント」という仕組みの根幹にある「貯める楽しみ、使う喜び」という私たちの思い、感覚は不変であり、これからの未来もずっと変わらないでしょう。

ポイントサービスコンサルタント。
慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。社内ベンチャー制度にて2003年、国内唯一のポイントサービスおよび会員組織構築・運用支援の専門コンサルティング会社株式会社エムズコミュニケイトを設立。大手企業、自治体のポイントサービスやCRM・顧客戦略に関するコンサルティングのほか、セミナーや講演、執筆活動を行う。著書『成功するポイントサービス』(2010年 WAVE出版)、一般社団法人日本カスタマーエンゲージメント協会理事、総務省ポイントサービスアドバイザー、三鷹市地域ポイントの検討委員ほか。テレビ東京「ガイアの夜明け」ほか出演。
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