この記事は2024年7月14日に「第一生命経済研究所」で公開された「日銀手法に倣った合成予想インフレ率の推計」を一部編集し、転載したものです。

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筆者推定の予想インフレ率指標は+1.69%に
本日公表された日銀の「生活意識に関するアンケート調査」に基づき、永田・中澤(2024)や大柴(2024)を参考に、家計・企業・専門家の予想インフレ率を統合した合成予想インフレ率指標の推定を行った(日銀手法を完全再現しているわけではない点に留意)。推定した4-6月期の合成予想インフレ率指標(5年後)は+1.69%。前期(1.67%)から若干の上昇という結果を得た(資料1)。
日銀は過去から物価の状況を説明する際に「基調的インフレ率」を度々取り上げており、最近も植田総裁は基調的インフレ率が依然として目標である2%を「やや下回っている」と述べている(1日、ECBフォーラム)。日銀の説明する「基調的インフレ率」の定義ははっきりしたものではないのだが、それをみるうえで重視しているもののひとつと考えられるのが予想インフレ率である。合成予想インフレ率は家計・企業・専門家の予想インフレ率を複合した指標として、日銀からの公表資料でも複数回登場しており、過去の総裁発言でもその水準感を参照しているとみられるものが複数ある(資料2)。
筆者推定値は若干の上昇にとどまっており、これに近い水準で日銀もみているとすると、「基調的インフレ率」に関する日銀判断はさほど大きくは変わらなそうだ。引き続き、2%に向けて緩やかに上昇している、という説明が続くと考えられる。次の閾値として注目したいのが、本指標が1.75%を超えるタイミング。1.5より、2が近くなってくると、「2%に近い」等の説明も可能になり、情報発信に変化がみられる可能性がある。

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第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也