本記事は、匠 英一氏監修の著書『すぐに使えるビジネス教養 心理学』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
目的志向の価値観を育てる「解決志向アプローチ」
未来から考えることで視野が広がる
新卒で大手飲食チェーンに入社した孝子は、研修でマナーや電話応対を学びました。しかし実務では、形式だけでは対応できない場面に直面します。
ある日、クレーム対応で迷った孝子に、先輩は「理想の店長ならどう動くと思う?」と問い返しました。その言葉で、孝子は失敗の原因探しばかりしていたことに気づきます。
後日、店長が売上だけでなく、人員配置や他店への影響まで考えて判断している姿を見て、孝子は「ありたい姿」を持つことで仕事の見え方が変わることを実感したのでした。
解決志向アプローチが行動を変える
この変化の背景にあるのが「解決志向アプローチ(solution focused approach)」の考え方です。
これはミルトン・エリクソンらの短期療法の方法です。問題の原因にこだわってしまうのではなく、「どうなりたいか」「すでに少しでもできていることは何か」「次にできる小さな一歩は何か」に注目します。未来の自分や望ましい役割を基準にして現在の行動を選び直すのです。
これが解決志向アプローチの発想の軸であり、「勇気づけ」の言葉で知られるアドラー心理学とも重なるものです。もちろん、過去を振り返り失敗の原因を考えることは役立ちます。ただし、原因分析が「なぜできなかったのか」という自責の念につながることも多いのです。
そこで解決志向ではそのような「過去志向」よりも、「目的志向」に注目します。目的志向により未来のイメージを具体化することができ、次に何をすればよいかが見えやすくなります。
これはポジティブ心理学の研究でも、「自分にもできそうだ」という自己効力感、行動の柔軟性、継続性、意思決定力などが高まる点が示されているものです。そうしたことから、解決志向アプローチは行動と成長を支える実践的な心理の枠組みだといえるでしょう。
1990年東大大学院教育学研究科を退学後、同年には東大の医学系研究者ら共にとベンチャーの(株)認知科学研究所を創設し、東大医学部公衆衛生研究室にてストレスと創造性の研究成果を事業化。
それ以後は95年に通信機器メーカにて営業・事業開発の部長職に就き、アップル社やNEC、住友3M、NTTなど100社以上のコンサル・研修業に従事。
20代の学生時代より教育改革のために私塾「エミール」設立、東進スクール研究所顧問、eラーニングの(株)デジタルナレッジ顧問や販売ソフト企業の非常勤取締役など歴任する。
他に公的な業務としては、早稲田大学IT経営戦略研究所客員研究員、立正大学心理学部、医系大学の非常勤講師などを歴任。
また、CRM協議会(初代事務局長)など15件の業界団体を自ら創設して新しいビジネスモデル創りを推進。
現在は主に「ビジネス心理検定」の資格普及と、AI活用の思考法の教育・コンサル業に従事。
著作には『サクッとわかるビジネス教養;心理学』(新星出版社)、『ど素人でもわかる心理学の本』(翔泳社)、『ビジネス心理学』(経団連出版)など60冊ほど。
TVでも「ナカイの窓」等でレギュラー出演・企画し、「しぐさ行動分析」の専門家で知られる。
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