毎年、出生率が発表され、選挙のたびに少子高齢化対策、子供のための支援策が声高に叫ばれます。日本だけでなく、海外でも先進国となった国は皆、少子高齢化の時代を迎えるようになりました。人口構造が変わると何が変わるのでしょうか。そして、人口構造が変わった世界ではどのように過ごし、資産を運用すれば良いのでしょうか。

本コラムでは、高齢化が進み人口構造が継続して変わって行く今必要な「価値を保つ不動産の条件」について海外事情なども見ながら考察します。

【参考】

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①人口オーナス社会とは、何か?


日本は今、海外の国々に先だって高齢化が進み人口オーナス時代に突入しています。
オーナス(onus)とは、重荷や負担といった意味の単語です。つまり人口オーナスとは、人口構成の動きが経済成長にとって重荷になることや負担となる状態のことを指す言葉です。

人口オーナスが経済成長にもたらす影響は、今まさに私たちが体験していることです。それは、生産年齢人口(15歳から65歳未満)が減っていくなかで、従属人口(乳幼児や65歳以上のシニア)が増加していくという状態から発生する経済、社会システムに起因する高齢化社会の様々な歪です。
例えば、税収が減る一方、社会保障費は増加します。また、シニア層の貯蓄はあるりますが、消費に結びつかず市場にお金を回す政策が必要になる等、海外からも注目され選挙や日々のニュースで目にする「日本の問題点」とも言えるものです。

日本は、海外の国々に比べて一足早く高齢化が進み、1990年代中盤から人口オーナス期に突入しています。そして、高齢化が進み人口構造が変化しているということは、不動産を含めた消費傾向も変化しているということです。
では、次のトピックでは、海外の例をあげ高齢化による人口オーナス社会がどんな変化を呼んだのかについて見て行きます。


②人口オーナス期にある諸外国


人口オーナス期にある国は、発展途上国から一歩進んだ国や先進国です。海外でも日本を始めとする先進各国が人口の増加(人口ボーナス)にともない高度経済発展を遂げ、成熟期を経て高齢化社会へ突入しています。

アジアでは、日本のすぐお隣の国、韓国も高齢化が進み人口オーナス期です。韓国では、マンション等の不動産価格が下落しており、完全に不動産の供給が需要を上回っています。同時に国民の借金も増えており、韓国政府が借金問題に切り込んだり、社会保障制度を充実させようと努力しています。しかし、韓国は人口オーナス期にあるため継続的な税収増がみこめず、政府も良い手立てを講じられずにいます。
中国も、ここ数年で人口オーナス期に突入します。中国のマンション価格の高騰など不動産バブルともいわれる状態がどう終結するのかの答えが見える日も近いかもしれません。また、都市部と農村部の格差問題をどう取り扱うか、世界中から注目を集めています。

アジア以外の海外の国に目をむけると、人口ボーナスの間に上手く経済成長を遂げられた国と、経済成長半ばに人口ボーナスが終わってしまった国があります。
例えば、旧共産圏の中東欧諸国では人口ボーナスと経済発展は比例していません。これは、大国ロシアの平均寿命も関係しているかもしれません。しかしながら、ロシアを始めとする旧共産圏の中欧諸国も、既に人口オーナス期に突入しています。

経済成長と人口構成の関係については、相関がみられる部分とそうでない部分があります。しかし、現在海外の国々のどの地域にある国でも、人口構成による変化が訪れています。

高齢化社会を迎えるにあたって、住みやすいとされる国の条件は一つです。「人口オーナスになる前に経済発展を遂げ、社会保障を充実させることができたかどうか。」この条件が大切な理由は、経済発展を成し得た、国に余力がある状態でないと社会福祉の仕組みや枠組みを作ることが難しいからです。
その点、日本は海外の国々に比べて高齢者社会へ上手く突入出来ています。将来に渡って、税収をどうするかという問題は残りますが、社会保障システムが出来あがっているという点は評価に値します。