過去に例のない水準の円安
円安の動きが止まらない。昨年は、わずか半年あまりでドルに対し20円も円安が進んだ。円安持続期間としてもインフレ・円安・株高政策の推進により1980年代後半以降としては最長記録を更新する勢いだ。
この30年、ドル高・円安基調となった際のピークは、日米卸売物価基準の購買力平価であった。1990年4月の160円、98年7月の147円、02年2月の135円、07年6月の124円でピークは計4回あるが、いずれも購買力平価前後に位置している。つまり昨今のドル高・円安は、日米卸売物価基準の購買力平価に達したあと、円高・ドル安へと転換してきた。
それが今回の円安は日米卸売物価基準の購買力平価95円を軽々と上回っている。11年11月の1ドル=75円台から始まった今回の円安基調は、公的年金の指針変更によりさらに後押しされる可能性がある。
公的年金が為替相場の材料
公的年金の積立金・約130兆円を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が11月25日に発表した、14年度第2四半期の運用結果によると、7月から9月期の運用は3兆6,223億円の黒字だった。国内外の株式の上昇、外国債券の運用が好調だったことが要因だ。
それに先立つ10月31日、GPIFは資産構成の見直し方針を明らかにした。今回の資産構成割合を見ると、国内債券は初めて50%を下回り48.39%、国内株式は17.79%、外国債券は11.84%、外国株式は16.98%となった。今後、GPIFは国内債の再投資を抑制し、国内株や外貨建て資産の買増しなどを行う方針だ。
投資家はこの移行ペースがどう変化するかを注視している。公的年金の外貨投資増は円安基調をさらに推し進める材料となることは言うまでもない。