世界の市場は、年初から大荒れだ。原油価格暴落、中国経済の減速、欧州のデフレ懸念、日本のマイナス成長、ギリシャの国家債務危機再来の危惧、そして米連邦準備理事会(FRB)の早期引き締め開始予測など、弱気材料には事欠かない。今週後半、そして来週以降、市場は下げ続けるのか。

米GMP証券のエイドリアン・ミラー常務は1月6日の経済専門チャンネルCNBCのインタビューで、「FRBが(米国現地時間の)水曜日に発表する、12月16日から17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録で、参加者が(米経済の見通しについて)何を言っていたかが大切だ。議事録と、(現地時間の)金曜日に出される12月の雇用統計が強気であれば、少なくとも短期的には市場の弱気が中和されるだろう」と予想する。

雇用統計で気になるのは、急激に進行する原油安が米雇用にどのような影響をもたらしているか、またそれが、どのように12月の数字に反映されているかだろう。経済ニュースサイト『ビジネス・インサイダー』が12月29日に報じたところによると、米国内の稼働中の油井の数は、採算割れによって12月5日の1,920本から、2週間後の12月26日には1,840本に急減している。

経済予測のIHSグローバル・インサイト社のエコノミスト、トム・ルニエゥイッツ氏は12月末の予測で、原油安の影響のため、2015年中に石油・ガス関連で40,000人が職を失い、掘削機器製造企業でも同年中に6,000人が失業するとした。他に影響を受ける産業の予想値は、これらに含まれていない。

こうしたなか、米投資会社アゲイン・キャピタルの創業者、ジョン・キルダフ氏は1月6日のCNBCの番組に出演し、「原油価格は早晩1バレル当たり40ドルに達し、さらに33ドルまで下落するだろう。そのために、米国内でさらに200本の油井が閉鎖される」と予測している。原油安が雇用にもたらす悪影響は、原油安のとどまることを知らない進行で、予想以上に深刻になる可能性がある。

もし雇用の数字が悪ければ、今年6月と大方が予測する米利上げが、年央以降にずれ込むことも考えられる。金曜日の雇用統計は、これまで以上に市場が神経質な反応を示すものになるだろう。


長期債利回り低下の謎

一方、「債券王」の異名を取る、米資産運用会社ダブルライン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)であるジェフリー・ガンドラック氏は、1月6日付『バロンズ』誌のインタビューに対し、「米利上げ後も、米長期債利回りは低下する」との見通しを示し、長期債利回り低下の流れが定着すると予想している。

長期債利回り低下の理由については、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のミン・チェン記者が1月6日、「マネーが安全な投資先にむかっている結果だ」とするスタンダードな説明をする一方、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は1月5日付のブログで、「投資家が、(国債を発行する)国が、デフォルト(債務不履行)に陥らないとの自信を持っているからこそ、利回りが下がり続けているのだ」と説明し、持説である「緊縮財政より赤字国債をどんどん発行すべき」の正しさが証明されていると示唆した。

こうしたなか、ブルームバーグ通信のマーク・ギルバート論説委員は1月6日付の論評で、「長期国債の利回りが日本、英国、ドイツ、フランス、米国など各国で低下してゼロに近づいている。どれだけ各国の中央銀行が量的緩和(QE)によって、市場をお金でジャブジャブにしてもインフレは起こらず、デフレの方が可能性は大きい」と述べ、中銀の力の限界を指摘した。

市場の目は、原油価格とともに、1月9日の米雇用統計と、1月22日に欧州中央銀行がついに、量的緩和に踏み切るかに向けられている。また、今月中旬に続々発表される米企業業績も市場のムードを左右するだろう。原油(コスト)安に支えられた好業績が報じられれば、現在の弱気が吹き飛ぶことも考えられる。

(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

(ZUU online)

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