今年の春節は例年と光景が異なる?
しかし、今年はこの光景が少し異なったものになるかもしれない。その理由はこれまで中国経済を牽引してきた消費の伸びの鈍化が明らかになりつつあるからだ。これを示すのが9日、中国統計局から発表された2014年の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数である。2014年のCPIは2.0%の上昇にとどまり2009年以降最低となっており、3.5%以内という中国政府が掲げる目標をも大きく下回る結果となった。また2014年の卸売物価指数は前年比1.9%減、特に12月は前年同月比でマイナス3.3%と下落幅は拡大傾向にある。
さらに前述の建機についても、需要低迷が明確になっている。この傾向は2014年の春節以降、徐々に顕在化が始まっており、2014年3月期の中国建機市場はピーク時の2011年3月に比べ4割減となっているとされる。
このような状況により、中国建機メーカーの多くがターゲット市場の見直しを迫られており、市場拡大を狙った海外展開もここ最近急速にすすんでいる。
これら指数の下落に見られる、企業活動の停滞は近年の中国における電力消費量の推移にも表れている。昨年7月、中国国家エネルギー局の発表では、前年比での電力消費量低下が明らかとなっている。この電力消費量は、中国経済の動向を見る上で極めて信頼性の高い指標であるといわれており、中国経済減速を示す、もう一つの象徴であるといえるだろう。
中国国内のインフラ投資の減速が大きな要因
このような物価下落や需要低迷の背景にあるのが、中国国内でのインフラ投資の減速である。シャドーバンキングによる隠れ債務の増加は近年大きく問題しされていたが、中国の地方政府による債権の新規発行抑制が始まっているのだ。例えば、江蘇省と新疆ウイグル自治区の地方政府がインフラ投資会社による新規債権を「保障しない」方針を打ち出すなど、すでに債権新規発行中止は数百億円に上ると言われる。この措置が、今後の中国経済にとっての大きな減速要因となることは間違いないだろう。
また、不動産販売の不調も、鉄鋼、セメント、建材、家具など関連産業の消費減速の要因となっている。
もちろん、中国政府もこのような経済減速に対し手をこまねいてばかりではない。昨年9月には、中国人民銀行が住宅市場のテコ入れのため、住宅ローン優遇策をさらに11月には、銀行貸し出と預金の基準金利引下げを発表した。これらの目的は不動産市場の急激な落ち込みを防ぎ、景気を下支えすることであるのは間違いない。
そして、このような政策の影響もあってか、中国の住宅在庫水準もピークであった2014年7月の18.7ヵ月から、11月には14.6ヵ月と落ち着きつつある。
このような数字を根拠に住宅販売市場が大幅に下振れするリスクが限定的との見方がある一方、この2015年は上記の利下げをはじめとする「アメ」と倹約令、新規債権発行などの「ムチ」をバランスよく使いこなすことが求められる非常に難しい局面に入ったことも確かである。習政権がこの局面にうまく対応することができなければ、一気に経済のバランスが崩れ、景気低迷につながる可能性も大きい。
多くの中国人が心待ちにする年間最大のイベント「春節」であるが、中国の政権担当者にとっては祝ってばかりもいられない状況は今後も続きそうである。
(ZUU online)
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