2015年1月、オバマ米大統領は一般教書演説の中で、「われわれがルールを作り、競争条件を平準化すべき」と、環太平洋連携協定(TPP)の早期締結に意欲を見せた。また、米議会に対しTPPなどの通商交渉で、交渉権限を政府に一任するよう要望。2017年1月までの任期終盤を迎えたオバマ政権にとって、レガシー(遺産)づくりとして、TPPの交渉妥結は重要な位置づけのようだ。TPP交渉をめぐる最大の懸案として残る日米間協議についても、交渉担当の米通商代表部フロマン代表は「まもなく非常に前向きな内容で決着できる」と展望を示した。


アジア経済圏「米国vs中国」

TPP合意の達成が、オバマ政権にとって単なる実績づくりのためとの見方は否めない。しかし一方で、アジア太平洋地域を舞台にした自由貿易圏での覇権を巡るし烈な争いの中、主導権を握れるかどうかで、将来にわたるアメリカのプレゼンスにも関わる問題でもある。そのアメリカに対抗するのは中国。

TPP交渉に参加していない中国は、東アジア包括的経済連携(RCEP)をTPPに対抗する貿易圏と位置付けてきた。RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)は、日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6カ国がASEANとそれぞれ結んでいるFTAを束ねて包括的な経済連携を目指す構想。この連携が実現すれば、世界半分の人口約34億人、GDP規模は世界全体の約3割の20兆ドル、さらに世界全体の3割ほどを占める貿易総額10兆ドルの経済圏が誕生する。しかし、この交渉では、インドが慎重な姿勢を示し、目立った進展がなく行き詰り状態だ。

そこで中国は、インドが加わっていないAPEC(アジア太平洋経済協力)の21カ国で構成するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を提唱し、主導権を奪還したい模様だ。米国もAPEC加盟国だが、フロマン代表はFTAAPには労働や環境に関する規制がないことを挙げ、アジアの成長を米国が取り組むにはTPPが優位であるとし、「何を選択すべきか明らかだ」として、中国への対抗心をむき出しにした。


指導権争いをめぐる大局にも注目

TPP交渉をめぐっては、日本では関税が見直され、米国からの安価な農作物の輸入によって、国内の農業が大打撃を受けることなどを危惧するなど、ミクロの視点に留まりがちだ。しかし、単にモノやヒトの流れに影響を及ぼすだけでなはない。日本の同盟国・米国がアジア太平洋地域で主導権を維持できるのか、あるいは米国経済を上回る勢いを見せている中国がその座を射止めるのか。世界経済を舞台にした覇権争いという大局にも注目していかなければならない。

(ZUU online)

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