原油価格の予想外の大幅下落を受けて石油元売各社をはじめとして、シェールガス開発に多額の資金を投入した総合商社などが軒並み2015年3月期決算で大幅な損失を計上することとなっている。特に1973年末の石油ショック以来、国策で原油を備蓄してきた石油業界にとっては価格下落による在庫の評価損だけでも多額にのぼっており極めて厳しい状況となっている。


国内石油元売各社・総合商社は軒並み減損計上の見込み

JXの損損益2100億円の期末見通しを皮切りに、石油元売各社は相次いで損益計上を発表している。また、シェールガス開発でいち早く先鞭をつけたはずの住友商事 <8053> が昨年9月に15年3月期の連結決算で減損損失2700億円を計上すると発表して市場の注目を集めた。丸紅 <8002> も今年3月決算で既に1200億円の損失計上見通しを発表している。三菱商事 <8058> もエネルギー関連で262億円の減益となっており、他の商社よりは損失が少ないが、原油価格の下落や環境の変化などが、北米や欧州のガス・石油開発での減損損失を招いている。


米国ではシェールガス企業の破綻も始まっている

原油価格の下落は米国でのシェールガス事業にも暗い影を落とし始めており、特に資金調達として利用してきたハイイールドボンドにも多大な影響がではじめている。すでにエネルギー系のジャンク債はディストレスト債の領域に入っており、デフォルトの危機に直面し始めている。


世界的な石油業界再編の動きも

世界的なレベルでは石油業界の大規模な合併やM&Aといったものはここ10年ほどは起こっておらず静かな時を過ごしてきたが、ここへ来て原油価格の下落に起因する統合・再編の波が急激に迫っている。石油業界は過去1年半あまりROE志向の経営を優先してきたが、再度規模のビジネスへと方向転換を迫られることになりそうだ。