2014年11月、日本初のヘルスケアリートである日本ヘルスケア投資法人が、東京証券取引所不動産投資信託証券市場に上場した。三井住友銀行(SMBC)系列のヘルスケアリートである「ヘルスケア&メディカル投資法人」も2015年3月19日に上場した。

ポートフォリオの構成としては、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などのヘルスケア施設が中心となっており、将来は病院の取得も視野に入れているようだ。今回は、今後のヘルスケアリートの将来性について見てみよう。


供給側が待ち望んでいたREIT

ヘルスケアリートが増えることは、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅を保有していた不動産オーナーにとっては、売却先の出口ができたという点において朗報だろう。

今まで有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅はオペレーショナルアセットとして分類され、運営者のその運営能力に依存し、住宅系REITが積極的な購入を行わないアセットタイプであった。

そのため開発後に売却益を得たい不動産オーナーにとっては、開発を行うインセンティブが低かった。しかしながら、上場REITという明確な出口が確立されれば、今後不動産ディベロッパー各社も有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の開発に向け、積極的に動き始めることになるだろう、


眠っていた開発用地が動き出す

有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅で、開発転売を目論むディベロッパーが動き出せば、今まで眠っていた土地が動き出す可能性がある。今まで眠っていた土地とは、どういうものか。それは第一種低層住居専用地域で老健施設の開発に適した大規模な開発用地であろう。


賃貸事業がやりにくい第一種低層住居専用地域

土地はエリアによって、建てられる建物の種類と建てられない建物の種類が、都市計画法によって定められている。大ざっぱに言うと、通常、人が多く住んでいるような街においては、都市計画法で市街地開発事業等予定区域として区分され、用途地域というものが定められている。

用途地域には、商業地や工業地、住宅地などを始め、計12種類に区分される。その中でも住宅地とされた用途地域は7種類定められており、高層マンションや病院、大学、一定の大きさの店などが建設できる第一種、及び第二種中高層住居専用地域や、小規模な店や事務所を兼ねた住宅、小中学校が建てられる第一種や第二種低層住居専用地域といったものがある。

この住宅地の中で、最も建築の規制が厳しく定められているのが第一種低層住居専用地域だ。第二種低層住居専用地域では、美容院や学習塾も建築可能とされているため、ごく限られた種類の建物しか建てられない第一種よりも建築制限がやや緩い。

用途地域の一般的な成り立ちとしては、駅周辺に商業地域や近隣商業地域などの商業地が配置され、その周辺にマンションなどを建設できる第一種、及び第二種中高層住居専用地域があり、そしてその周辺に第一種、及び第二種低層住居専用地域が広がることが多い。

そのため、第一種低層住居専用地域は、必然的に駅から遠くなり、賃貸需要も自然と弱くなるため、一般的には、第一種低層住居専用地域では、不動産賃貸事業が成立しにくい。

第一種低層住居専用地域は、用途の多様性に欠け、商業地域や中高層住居専用地域と比較すると、土地単価はもちろんのこと安くなる。不動産オーナーが第一種低層住居専用地の大地主だった場合、その有効活用は悩ましいというケースがほとんどだ。


第一種低層住居専用地域で行う賃貸事業

しかしながら、第一種低層住居専用地域の場合においても、建築可能で賃貸事業ができる物件がある。それが老人ホームだ。サービス付き高齢者住宅も、自治体によっては建築を認めるケースも多い。老人ホーム運営側も、入居者の家族がバスなどで通える立地であれば、借りてくれる可能性が十分ある。

第一種低層住居専用地域においても土地が広ければ、老健施設での賃貸事業は可能だ。土地代が安く購入できる可能性もあるため、ヘルスケアリートへの開発転売を試みるディベロッパーは、今後興味を示すことになるだろう。

従来の老健施設は、地主が、所有地の有効活用の一つとして建設しているケースが多かった。しかしながら、老健施設の出口ができたことで、ディベロッパーが積極的に第一種低層住居専用地域の土地を購入し、ヘルスケアリートへ売却するというビジネスモデルが出てくる可能性も出てきた。


今後は大手参入も期待

投資家にとっても、大手ディベロッパーが開発した物件が多くなれば、投資対象として安心感が増すだろう。大手ディベロッパーが手がける建物は、品質管理もしっかりしている傾向があるからだ。オフィス系や住宅系REITにおいては、大手ディベロッパーが物件を開発し、REITが購入するというビジネスサイクルが既に確立している。

ヘルスケアリートの物件開発についても、今後大手ディベロッパーが参入し、魅力的な投資対象となる可能性もある。まだ黎明期のアセットタイプであるが、これからが楽しみなREITであるため、今後の動きに注目したい。(ZUU online 編集部)

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