ギリシャ情勢は依然混沌としており、その進展は遅滞を来たしている。当初4月20日が政府手元資金枯渇のデッドエンドとされてきたが、3月23日付の フィナンシャル・タイムズ(FT)にギリシャの国庫は4月8日頃に空になるという記事が掲載された。

しかし、その後の交渉においてもまだ決定的なギリシャのユーロ離脱には至ってはいない。実際に3月末までにギリシャ政府には賃金と年金の支払いで1,700億ユーロの支払いが迫っており、IMFへの返済も4月9日に4.5億ユーロ、5月には7.6億ユーロ控えている。政府要人は、ギリシャにはこれらを支払う余力はないと公言する。

3月26日にはギリシャ野党で前政権最大の与党であったND党が、ギリシャ財政はイースター休暇(4月3日から)までもたないと発表しており、この1週間が勝負どころになるのは間違いない状況だ。


ユーロ圏離脱の可能性は「50%」



著名な資産家ジョージ・ソロス氏は先ごろ、ブルームバーグのインタビューでギリシャユーロ圏離脱(Grexit)の可能性は半々であるとしながら、今回のギリシャ危機はどちらに転んでもギリシャの負け戦さであり、ギリシャにとって最良の選択は、なんとかやりくりしてこの国難をすり抜けることだろうと述べている。

ギリシャ離脱をめぐる市場の見方はさまざまで、現状ではギリシャのユーロ離脱回避という見通しがたっているわけではない。ただ市場は、最悪の事態を織込みはじめているのだ。


突き返された包括的改革案を再提出



ギリシャが先日提出した改革案は、EU・IMFの実務者協議で具体性を欠くとの結論に至った。ユーロ圏高官は、改革案は「アイディアの寄せ集め」にすぎず、ユーログループとの協議には不十分との見方を示している。

それを受けドイツ政府は30日、ギリシャがより詳細な改革リストを提示するまで、ユーロ圏として追加金融支援を行わないとの考えを表明した。当面の資金繰りでギリシャは、政府短期証券の発行増額を模索していたが、欧州中央銀行(ECB)はギリシャの市中銀行に対し、短期の政府証券の保有を増やすことを禁止。

資金調達ルートが閉ざされたことで、受け入れられる具体的な改革案を提示しなければならないというギリシャ政府のプレッシャーは一層高まったのだろう。

4月1日には、新たな改革案を再提出。課税逃れを防ぐために監査を強めたり、付加価値税の徴税を強めたりすることで歳入を底上げするという内容のものだ。FT紙によると、歳入を約60億ユーロ増やせると見込んでいる。EUなどは改革案の実現性を点検し、来週にも本格的な支援継続に向けた協議に入る予定だ。

しかし、改革案は年金支給額の引き上げなど、改革の後退とも受け取れる政策も盛り込まれており、判断が難航する可能性もあるとされている。


ユーロ離脱が確定しても意外に影響軽微!?



2012年当時のソブリンリスクと異なり、ギリシャのユーロ圏離脱が現実になった場合でも、民間部門のギリシャ債務保有はほとんどなくなっており、損害が出るのはもっぱらEU関連の公的機関だけにとどまる見込みだ。ギリシャ危機が明るみに出てから5年ほど経過することもあって、各国とも最悪の事態を回避する準備は整っており、影響は意外に軽微との見方が強い。


ロシアとの結びつきをEUは警戒



ドイツのメルケル首相が危惧しているのは、ギリシャが資金提供を含めてロシアとの結びつきを強くすることだ。これが引き金となりロシアに隣接するEU加盟国の離脱が加速する事態に進展すれば、欧州圏の安全保障上の大きなリスクとなる。

ドイツはこれを回避するため、妥協案を提示するなど歩み寄りの姿勢も見せている。4月中には資金枯渇の恐れがあるため、交渉はいよいよヤマ場を迎えるが、金融関係者からはギリシャ離脱問題はいささか食傷気味といった声も聞かれており、結局なんらかの暫定措置で決着すると楽観視する向きも多い。


税金を払わないギリシャ国民

ギリシャの国民意識は我々の常識を大きく超えた状態にある。ギリシャ国民の税金滞納額は2014年末で760億ユーロ(日本円で11兆円)にのぼり、今年1月の税収も34.9億ユーロと、予定税収より10億ユーロ以上少ない。国民の多くは政権交代による税制改正を期待して滞納しているという見方もある。

議会は長期滞納者用に分割で税金を支払えるよう法案を可決したとされているが、ギリシャ政府はこの条件で支払いに応じる可能性があるのは滞納者8人に1人程度という悲観的な見通しを示している。

一時的に資金提供を受け、債務不履行を回避できたとしても、そもそもこの国民意識を改革することができない限り、早晩デフォルトのリスクは再来することになる。西洋文明発祥の地ギリシャはいつからこのような脆弱体質の国へと変貌してしまったのだろうか。この反緊縮策を強く望むギリシャ国民と、厳しい改革を迫るトロイカ体制との板挟み状態で、チプラス政権の綱渡り運営が続いている。(ZUU online 編集部)

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