グーグル(Google)社は3月26日、ヘルスケア業界の最大手であるジョンソン&ジョンソン(J&J)社傘下の医療機器会社エチコン(Ethicon)と提携し、手術室で患者への負担を極力減らす低侵襲手術支援を目的とした外科手術ロボットの共同開発を発表し、医療市場を中心に大きな注目を浴びている。
外科手術ロボットにより、制御、アクセス、精度が飛躍的に高まり、外科手術による患者の外傷や瘢痕化(いわゆる組織欠損)、術後治療を最小限に抑えられる可能性が高まるという。具体的な製品発売の計画など詳細については公表されていないが、いよいよ医療業界の手術ロボット開発にグーグルが本格参入することになる。
手術精度を高めるグーグルの人工視覚・画像解析技術
両社の発表によると、この医療ロボットではグーグル社が既に保有する人工視覚・画像解析技術により、手術を行う医師はディスプレー上で肉眼では確認できないような血管や神経を確認すると同時に、MRIなどのデータを参照しながら施術を進めることができるとしている。
こうしたロボット支援手術が実現すれば、切開部位は最小限にとどめられ、同時に外科医の施術精度も大幅に高めることが可能となる。また患者にとっても不安を軽減させられるとともに、術後の回復期間短縮に大きな効果をもたらすことになる。
様々な領域に投資を進めるグーグルが医療用ロボットの開発に着手することは、そもそもそれほど大きな違和感を覚えないが、この開発のポイントとしては、外科医の目視情報を向上させるリアルタイム画像解析機能の開発が実現できることにあるようだ。何故なら、これが成功すれば幅広い分野での手術サポートに応用することが可能となる。
チャンス一杯の医療ロボティクス業界
実は、このような医療ロボティクスは既に過去15年以上にわたって研究され続けており、心臓手術や目の手術、前立腺の手術などに利用されはじめてきている。この領域で本格的に利用できる精度の高い製品が開発できれば、コンピュータが手術をする時代も夢ではなくなるのだ。
ロボットビジネスといっても、特に医療分野という極めて付加価値の高いものへ参入しようとするのが、グーグル社の狙いのようだ。グーグルはスイス・ノバルティス(Novaltis)が製造するスマートコンタクトレンズなど、医療分野への取り組みを強化しており、今後もこの領域でさらに新たな提携発表が起きることが予想される。
進化するグーグルのロボット参入
グーグルは2012年ごろから自社ロボットの開発を目指し、7社以上の技術企業買収を続けてきており、Android OSの責任者であったアンディー・ルービン氏を開発責任者とするなど積極的な取り組みを行っている。当初は製造や電子機器の組み立て現場での単純な肉体労働に置き換わるものが開発されると考えられてきた。
しかし、今回のように精度の高い医療用ロボティクスにも参入するほどその開発方向が多角化され、かつレベルも高まってきているといえる。
グーグルのロボットが市場で多用される時代が来るのもそう遠いことではなくなっていることを感じさせる、グーグルライクな提携劇だ。(ZUU online 編集部)
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