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(この記事は株主手帳2015年3月号に掲載されたものです。記事: 株主手帳 、 写真=Thinkstock/Getty Images )

去年の夏頃から始まった原油安は、世界の金融、経済、政治を巻き込み、大きな変化をもたらしています。東日本大震災による原発事故以来、エネルギーコストの上昇に苦しんできた日本にとってその恩恵は大きく、日本と同様に原油の大半を輸入に頼ってきた中国やインド等の国々にも歓迎される流れです。

今回の原油安の原因は、サウジアラビア等の産油国によるシェール潰しというのが一般的な見方ですが、それ以外にも様々な要因が考えられます。FRBの量的緩和第3弾(QE3)の終了や新興国の成長鈍化、中国では生産年齢人口(人口ボーナス期)が2015年にピークアウトを迎え、経済の減速が予測されることも影響したとも考えられます。

また、トヨタ自動車が水素自動車「ミライ」を、自動車メーカー各社もEV車を次々に発売するなど化石燃料を使用しない車や、ハイブリッドカーなどの燃費の良い車の普及が世界中で広がっていることも大きな要因といえるでしょう。

世界の石油輸出は、年間200億バレルであり、価格が1バレル50ドル下落すると、輸出国から輸入国へ1兆ドルの所得移転が生じます。石油の輸入国では貿易収支が改善し、インフレを抑制、実質所得の増加が景気の追い風となります。今年に入ってから原油の輸入国であるインド、トルコは、原油価格の急落に伴うインフレ率の低下で相次いで利下げをしています。原油価格の動向がガソリン価格に反映しやすい米国では、ガソリンが大幅に値下がりした結果、ガソリン節約代は今年最大9兆円になる可能性もあります。

一方、インドやインドネシアなど政府が燃料価格を管理し補助金を出す国々では、原油安は政府部門の負担減となり、その分がインフラ投資や教育投資などの財政支出の増加に繋がっていきます。

1980年代半ば、逆オイルショックとしてサウジ主導で原油安が進み、その影響もありソ連が解体し、米国においてもテキサス州などの産油州経済の悪化を通じて貯蓄金融機関(S&L)の不良債権問題の深刻化がありました。98年前後の原油価格低迷時には、ロシアのデフォルトが発生しました。

今回は、すでにベネズエラが危機的状況に陥り、ロシアも輸出に占める原油の比率が約7割と高く、外貨準備は昨年末で約3400億ドルと比較的潤沢にあるものの、すでに過去1年で3割近く急減しており、原油安がプーチン政権の崩壊につながる可能性もあります。

日本においても、商社などエネルギー権益を保有している企業等が大幅な減益を余儀なくされ、株式市場でも原油安を背景として大きく変動する局面も出てきています。原油安がさらに進めば「○○危機」といった大きなショック安に見舞われることも想定されますが、今回の原油安の背景が、基本的にはシェール潰しを目的とするもので、世界景気の悪化からの原油需要の減退によるものではないと考えられるので(各論では多少はありますが)、世界経済全体、とりわけ日本経済には大きなプラスとなってきます。


日本経済へのプラス影響を考える

内閣府の試算では、原油価格が50パーセント下がるとGDPを1.2パーセント押し上げ、企業の所得を3.3パーセント、労働者の賃金を0.7パーセント押し上げるとしており、2年目には、さらに効果がアップするとしています。

日銀は、原油安による物価の押し下げ効果が0.7ポイントとして2015年の物価上昇見通しを1パーセントに修正しました。2パーセントの物価上昇目標を掲げる黒田総裁は、原油安はデフレ心理の転換が遅れるリスクと捉えていることから、さらなる金融緩和も視野に入ってきます。アメリカやユーロ圏でも原油安によるデフレの懸念は強まっており、FRBの金融引き締めの遅れや、ECBの追加の金融緩和も考えられ、世界の株式市場は、当面金融相場が続いていくと想定されるでしょう。

原油安のメリットを受ける銘柄は、空運で日本航空 <9201> 、全日本空輸 <9202>、海運で日本郵船 <9101> 、商船三井 <9104> 、陸運で日本通運 <9062>、ヤマトホールディングス <9064> 、紙パルプでは王子ホールディングス <3861>、日本製紙グループ <3863> 。タイヤでブリヂストン <5108> 、東洋ゴム工業 <5105>。電力で東京電力 <9501> 、関西電力 <9503> 。

エネルギー資源のほとんどを輸入に頼り、原発も停止している日本にとって、原油安はまさに経済に吹く神風です。消費者心理にも、消費増税を打ち消すような効果をもたらしています。異次元の金融緩和、円安、原油安というトリプルメリットの中、株式市場は、バブルの崩壊以降長く続いたボックス相場を上抜け、さらに上昇していく可能性があります。原油安の負の側面から売られる局面もあるかも知れませんが、原油安は日本経済にとって間違いなくプラスだということを念頭において、今後の相場に期待したいと思います。

著者プロフィール
IFA 原田茂行 大和証券、SMBC日興証券、野村証券を経て株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルに所属し、IFAとして独立。日本証券アナリスト協会検定会員、囲碁三段。 (記事提供: 株主手帳

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