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(写真=ZUU online 編集部)

2015年4月9日、ナティクシス・アセット・マネジメント株式会社がメディア関係者を招待した限定セミナーを開催した。

同社グループ内の投資運用会社、ルーミスセイレスの新興市場投資部門の統括者ピーター・マーバー氏が、昨今のドル高やコモディティ価格下落による新興国の債券市場への影響などについて語った。


新興国債券の運用時はどこのセグメントかを明確に

昨年の新興国債券の運用パフォーマンスについて、この問いに答えるときには、どのセグメントを見ているのかというのを問うべきであるとのこと。投資家として新興国市場に投資をするときには、自分がどこのセグメントに投資をしたいのかを明確にすることが重要であるとした。

そして、ここ1〜2年で明確になってきたこととして、自国の通貨によって戦略を変えるべきであるということを挙げた。例えば、米ドルの投資家は、それ以外の70ヶ国の投資家、日本の投資家、あるいはオーストラリアの投資家と比べても戦略は違ってしかるべきであるということだ。

特に、「日本の投資家が新興国市場に投資をする際に一番注意しなくてはいけないことは、円をショートにするのか、あるいは円をヘッジするのか」とした。


新興国市場はバブルなのか?

いま現在新興国市場のバブル懸念に関して、2013年の5月に起こったテーパリングショック、それから2013年末から2014年初に起こったフラジャイルファイブ、そして最近では原油価格下落ショックを振り返った上で、「ここ2年半の間に、マーケットでは3回ほど非常に大きな打撃がおきたことでバブルがはじけた、というよりかは空気が抜けたという表現が正しいだろうが、今はもうバブルは残っていない」とのことだ。


大きなチャンスは社債にあり

新興国市場の中でも大きなチャンスというのは企業が発行する社債にある。9年前に始まった社債のインデックスは90くらいの発行体しかなかった。今ではそれが550以上になっている。それにソブリン債などを足していくと、約1000近い発行体の中から選んで投資をすることができる環境が整っている。

昨年新興国の国や企業によって、4千億ドルの新発債の発行があった。その内訳をみると、75%が社債ということがわかる。社債の方が国債よりもずいぶんと急速に成長していることが見てとれる。そのため、新興国市場の債券投資家へのアドバイスとして、「株式と同様に個別企業を分析する必要がある」とのこと。


新興国の中でも弱気・強気地域が明確に分かれる

昨年は新興国の中でも、コモディティを生産している国は、製造業を主体としている国よりも打撃を受けていると述べ、「例えば、産油国のロシア、ナイジェリア、ベネズエラ、エクアドルはずいぶんと打撃を受けている。それから、鉄鉱石の輸出国であるブラジル、そしてエネルギーの輸出国であるコロンビアもずいぶん打撃を受けた。しかし、今はそういった国々のスプレッドが広がってきたので魅力が高まっているといえるだろう」と新興国の弱気地域について話した。

そして、魅力的な国として、「輸出よりも国内のポテンシャルの高い国を挙げる。中国は大きな輸出国だと思われがちだが、経済の中では大きな割合を占めているわけではなく、消費のほうに非常に大きなポテンシャルがある」と消費をテーマに中国市場の魅力を語った。

さらに、インドネシアやフィリピンも魅力的的であるとした。製造業が主体であるが、人口が多いため、国内消費も期待できるとのこと。東欧においては、ハンガリーがこれから格上げされる可能性があるとした。


2015年最大の新興国リスクとは?

2015年最大の新興国リスクとして、「危機前の状況に戻るということを望んでいる国が一番危険である。変化に対応するための改革をしない、それに適応できない国」がリスク要因であるとした。

さらに、「ベネズエラが非常に大きなデフォルトの可能性が高いだろう。また、ブラジルなども、新しい環境に成功しようとするならば非常に難しい改革を行うことが求められる」と具体的な国名を挙げた。


米国の利上げはリスクにならない?

米国の利上げ時期に関しては9月くらいが想定されるとした上で、「前回の利上げ時(94年)は7回も利上げを行なった非常に急速な動きのため、全体的に大きな利上げの幅となったが、今回は、いつそれが始まるとしても非常に小さな幅で、かつ、ゆっくりとしか進んでいかないため、それほど大きな影響にはならないだろう」と利上げが新興国へ与えるリスクについては限定的であるとした。


日本人投資家に向けて…

投資家のもっているシンプルな選択肢として株式と債券を挙げ、その上で、「株式には予測されたリターンはない、それは希望だ。しかし、自分のポートフォリオが100%上がるというような確証はない」として、ある程度リターンを予測できる安定性のある債券を組み入れる重要性を述べた。

そして、日本人投資家へ向けて、「日本の投資家には債券のチャンスというのは20年間なかった。金利がゼロ水準の国にとっては新興国債券というのは検討に価する投資先だろう」と語った。

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