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平成15年3月の発行以来(当初は10年変動金利型のみ)10年が経過した個人向け国債ですが、ここにきて発行額に異変が生じています。2013年の10月発行分に関して、3年固定型、5年固定型については前回発行分と大きな差はありませんでしたが、10年変動型については前回発行高の2倍を超える需要がありました(これまでは、個人向け国債は比較的認知度が低いうえ、利率も低かったため、なかなか需要は盛り上がってきていませんでした。)。これは、個人投資家が、今後は金利が変動すると見ていることを明確に表しています。

そこで、ここではその個人向け国債の利用価値についてみていきたいと思います。


①異次元金融緩和がもたらす不確実性

現在、日本銀行は、1年半後には安定的な2%のインフレを実現するため、異次元の金融緩和を行っているところです。しかし、目論見通り1年半後に安定したインフレが定着するという保証はまったくなく、それどころか実現可能性はかなり低いのではないかと思われます。 日本銀行が目指すところは、経済成長(景気上昇)が労働者の賃金上昇につながり、その結果需要が喚起され物価が上昇するという好循環からもたらされるインフレでありますが、これを実現するには超えるべき障壁が数多く存在します。そのためデフレに逆戻りするリスクも多分に存在しますし、またインフレに転じたとしても、円安により輸入物価が上昇し、企業収益が大して増加しない結果労働者の賃金が上昇せず、物価だけが上昇してしまうという悪循環からもたらされるインフレに陥ることも十分想定されます。

また、日本銀行が大量の資金を市場に供給するため、国債市場から大量の国債を買い入れていますが、一歩間違えれば、これは財政ファイナンス(国が中央銀行から借金すること)とみなされかねないため、非常に危うい金融政策を行っていると言わざるを得ません。したがって、現在の金融政策が、ひとたび財政ファイナンスだと見なされれば、日本国債に対する信用は失墜し、金利が急上昇(国債価格は急落)してしまいます。金利が急上昇すれば、円が売られ輸入物価が上昇し、悪性のインフレ(最悪の場合にはハイパーインフレ)に陥ってしまうことでしょう。

つまり、現在の日本銀行の金融政策は、財政ファイナンスとみなされるか否かの瀬戸際にあり、非常に不確実性が高いといえるのです。


②不確実性下での資産運用

それでは、不確実性が高い状況下では、どのように資産を運用していけばよいのでしょうか。

将来、デフレが進むのであれば、預貯金や債券のようなローリターンの金融商品で運用していたとしても、それほど大きな問題にはならないでしょう。なぜなら、デフレは、時間の経過とともに自国通貨の価値が相対的に上昇していくわけですから、例え全資産を現預金で保有していたとしても、時間が経つに連れて資産価値は増加するからです。一方、将来、インフレが進むのであれば、デフレとは逆の理由から、価値が相対的に低下してしまう現預金や債券での運用は避けるべきで、物価の上昇に伴い価格も上昇する株式や不動産、商品での運用が有効だといえるでしょう。

したがって、不確実性下では、デフレかインフレかのいずれか一方に適合する運用方針を立てるのではなく、いずれに転んでも大きな損失は被らない、すなわち様々な状況を想定した運用方針を立て、それに基づいてポートフォリオを構築することが重要といえます。つまり、預金や債券と、株式や不動産、商品等を上手に組み合わせることが求められるわけですが、そこで検討して頂きたい金融商品の1つとして、個人向け国債があります。