世界のビール大手が相次いで各地の中・小規模のビール会社の買収を急いでいる。これまでも積極的なM&Aによりグローバルレベルで寡占化のパワーゲームを繰り広げてきた大手ビールメーカー各社だが、どうもこの動きは単なるシェア戦争を制するためのM&A競争とは異なる意味合いを持っているようだ。そのビール業界の動きを追ってみた。
業界最大手インベブは地ビール買収に積極的
日本ではバドワイザーブランドで有名なアンハイザー・ブッシュ・インベブは年初にかけてオレゴン州の10バレルブルーイングとエリジアンブルーイングといった小型ビールメーカーの買収を決定した。
これに先立ち昨年はニューヨーク州の地ビール会社であるブルー・ポイント・ブルーイングやチェコのビボバル・サムソンを買収するなど各国で地ビールの小型メーカーに的を絞り積極的な攻勢をしかけている。
業界3位ハイネケン、4位のカールスバーグも買収加速
ビール業界世界3位のハイネケンは日本でも著名なブランドだが、同社はスロベニアのビボバルナ・ラシュコの株式を51.1%取得し今後残りの株式も買い付けるとみられる。ビボバルナは日本ではまったく知名度のないブランドだが地ビールとしてラシュコのブランドを製造する老舗メーカーである。
業界4位のカールスバーグ(デンマーク)はギリシャに保有する子会社ミソス・ブルワリーを同じくギリシャで3位メーカーのオリンピックブルワリーと統合し、ギリシャで2位の座に浮上する。
これまでの猛烈なM&Aパワーゲームとは異なる動き
ここ数年世界のビール市場では大手の1社が新興市場のシェア獲得のためなどに同業他社を買収しはじめると、ライバル企業もすぐに対抗して買収をするといったパワーゲームが繰り広げられ、買収合戦による寡占化の動きが進んだ業界となった。地域にあったブランド展開もさることながら、とにかく世界的な主要市場で大きなシェアを獲得することに全力をあげてきたと言える。
しかし大きな期待のかかっていた新興国市場は期待されたほどの成長を達成しなくなっていることでビールの消費にも影響が出始めている。さらなる成長が見込まれていたはずの中国は既に消費が頭打ちとなってきており、他のBRICS各国も決して順調な経済状況ではない。
したがって成熟市場の先進国をはじめとする既存市場に多様な品種を投入することにより細かくシェアをとるためのM&A戦略に変化したことが伺える。