アメリカの今年第1四半期(1〜3月)の実質GDPは、厳冬・原油安による消費・投資の低迷やドル高による輸出減速で、ほぼゼロ成長に陥った。今後季節要因がなくなり回復する見込みはあるが、FRBの利上げで再び悪化する恐れも否定できない。
原油安・ドル高のトレンドに厳冬が加わり減速
米商務省が発表した第1四半期の実質国内総生産(以下GDP、季節調整済みの年率換算)の速報値は、前期比で0.2%増にとどまった。前期の2.2%増から大きく押し下げられ、辛うじてプラス成長を維持する程度に落ち込み、昨年第1四半期(2.1%減)のマイナス成長以来の低水準。市場の事前予想(1.0%増)も下回るなど振るわなかった。
GDP全体の約7割を占める最大の項目が個人消費支出だが、これも前期の4.4%増から下押しされ、1.9%増と1年ぶりの低い伸び率に過ぎない。原油安で家計の可処分所得は増えたものの、北東部を中心とした寒波で悪天候となり、個人消費にブレーキがかかったようだ。同様の事情から住宅投資も、前期の3.8%増から1.3%増へと上げ幅が縮小した。
そうした家計の行動以上に、企業の経済活動は停滞している。
設備投資は前期の4.7%増から3.4%減へとマイナスに転落。2011年第1四半期(0.9%減)以来4年ぶりの減少に陥り、2009年第4四半期(3.6%減)以来の低さだ。ドル高で輸出が伸びなかったことに加え、西海岸で続いていた港湾労働争議が足かせとなり、企業の設備投資が停滞した。
また、原油安で石油製品の生産が弱含み、エネルギー関連企業が投資を控えた。機器への投資が0.1%増と伸び悩む。これに加え、オフィスビルや工場などの非居住用構築物への投資は23.1%減と2年ぶりにマイナスに陥り、2011年第1四半期(27.1%減)以来4年ぶりの大幅な悪化。原油安で石油会社は予算を削減しているため、特に石油探索などへの投資が極めて低調だったことが、全体の不振につながっている。
さらに、政府支出・出資が0.8%減と2期連続で後退するなど、民需だけでなく公需も縮小が否めない。加えて輸出が7.2%減となり、1年ぶりに減少に転じるなど外需も底割れした。
FRBによる利上げ観測を背景としたドル高基調に加え、上述の港湾労働争議による荷役作業の停滞などが響いた模様だ。このように輸出がマイナスに陥った一方で、輸入は1.8%増とプラスを維持したため、純輸出も507億ドル赤字幅が拡大している。
原油安やドル高などの基調要因に加え、厳冬といった季節要因も重なり、GDPは急速な減速を余儀なくされたといえよう。
利上げによる景気減速の懸念
今回は冬場の厳しい天候という一時的な事情が低成長の一因となったため、それがなくなる第2四半期は成長率が戻る可能性も十分ある。
ただ今年後半以降、FRBが利上げをし始めた場合、金融引締めの効果がさらに強まり、家計や企業の経済活動をさらに冷え込ませかねない。そうなると、雇用や所得もカットされて家計は苦しくなり、購買や投資をより控えることになるだろう。また金利を引き上げてマネタリーベースを減らせば、金銭の価値が一層高まり、ドル高が助長されて輸出がさらに伸び悩むことになる。このように内需と外需がともに減退し、経済成長が滞る恐れも否定できない。
その流れを予測してか、ISMの景況感指数を見ると、量的緩和終了後の昨年11月から今年3月にかけて、製造業は57.6から51.5、非製造業は58.8から56.5へと各々下落している。個別項目について製造業を例にとると、新規受注は62.1から51.8、生産は62.6から53.8、輸出は55.0から47.5と、企業活動後退の懸念がぬぐえない。雇用も54.6から50.0へと低下しており、これは個人消費を押し下げる要因となる。
今後もFRBによる利上げのタイミングやペース、それによる実体経済への影響に注目していかなければならない。(ZUU online 編集部)
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