3月は若年層や中高年層を中心に雇用環境が改善し、3.4%の低い失業率が維持された。有効求人倍率も1.15倍と高水準を持続。現状では外需対応の雇用確保と見られるが、今後は消費や投資が本格回復し、内需対応に向けた人材確保の動きが強まるかがポイントだ。
完全失業率は低水準を確保
総務省が1日に発表した3月の完全失業率(季節調整値)は、前月及び市場予想を0.1ポイント下回る3.4%となり、昨年12月以来の低水準を確保。
就業者数は6,366万人で、前月より0.2%減少しており、一見雇用が悪化したかに見える。ただ就業者が減ったのは、55~64歳の0.8%減、65歳以上の1.1%減というように、主に高齢者層だ。一方15~24歳は2.1%増、25~34歳は0.2%増、45~54歳は0.3%増と、現在および今後の社会で中核を担うべき若年層や中高年層は拡大。雇用形態で見ても、対前年で非正社員は2カ月ぶりに増大に転じたものの、正社員は4カ月連続で伸びている。こうした点を考えれば、全体の就業者数が減っても、必ずしも悪い結果とは言えない。
一方完全失業者数は221万人で、前月より3.9%縮小し、2カ月続けて改善。これも主に65歳以上の高齢者が12.5%減っているが、それ以上に15~24歳の若年層が18.8%減と2カ月連続で改良している。なお、勤め先や事業の都合で離職した人が4.8%増えており、その点では好ましくない。ただ自発的に離職する人が7.5%減っており、賃上げを含めて労働環境向上の表れともいえる。
このように、3月は高齢層の就業者が減る一方で、高齢層と若年層を併せて失業者がそれ以上に少なくなったことで、引き続き失業率が改善したといえよう。特に若年層の雇用環境が良好になってきており、望ましい流れだ。
有効求人倍率は高水準を維持
厚生労働省が同日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月及び市場予想と同じ1.15倍を記録し、1992年3月の1.19倍以来23年ぶりの高水準を持続。
有効求職者数は201.7万人で、1.3%減と3カ月ぶりに前月割れ。一方有効求人数は231.9万人となり、こちらも1.2%減と6カ月ぶりに縮小。このように、いずれも同程度少なくなったことで、倍率は前月と変わらなかった。
なお当月はどちらもマイナスになっているが、これまでの流れでは、求職者は減るのに対し求人数は増える傾向にある。つまり、人手不足で雇用が拡大していることから、労働者は求職の必要性が低くなり、企業は採用意欲が高まっていることがわかる。
また当月新たに受け付けた分に限ると、新規求職申込件数は46.3万人で10.0%減となり、やはり3カ月ぶりに底割れ。これに対し新規求人数は79.9万人で、5.0%減と2カ月連続マイナス。
その結果、倍率は前月より0.09ポイント上昇して1.72倍となり、バブル期だった1989年平均の1.85倍に近づく勢いだ。
ただ昨年4月の消費増税以降内需が低迷してきたこともあり、企業は新たな採用をしづらくなり、新規求人数は減る月が目立ってきているのは確かだ。
内需回復で労働市場のさらなる拡大を
現状では輸出が7カ月連続で伸びており、外需は堅調だ。それに対し内需は停滞が長びいている。2人以上の世帯の実質消費支出は12カ月続けて前年割れが止まらない。新設住宅着工戸数も3月にようやくプラスに転じたばかり。そのため企業の人材確保も、現状では内需よりも外需への対応目的だとみられる。
ただ今後は、FRBの利上げで米国経済が悪化する恐れもあり、中国の成長率低下と合わせて輸出が失速しかねない。その状態で国内の消費が戻らないと、需要全体が失われて、企業の採用意欲が後退し、求人数が減って失業者が増えていく恐れもある。
それを防ぐためにも、外需依存から内需主導の景気回復へと切り替えていき、労働市場拡張の基盤を固めていかなければならない。(ZUU online 編集部)
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