―その点でいうと、まっとうなファンド運営がなされる市場になるべき課題とは、具体的にはどういったものでしょうか。

朝倉 :以前に比べ大分少なくなってきましたが、運用会社が力の強い販売会社の意向に沿って、運用商品を開発していくことがなくなることが重要です。

例えば、販売会社の売りやすい商品が、毎月分配型の商品であれば、10000口に対して毎月200円や300円という高い分配金を出すタイプのファンドを開発します。毎月分配型のファンドが全てよくないというわけではないですが、分配金を競合他社よりも少しでも高く設定するために、通貨選択型やカバードコール付きのファンドが開発されるのは決して望ましいことではありません。

収益以上に分配金を多く出せば、ファンドの基準価格はどんどん下がっていきます。こうした仕組みが提供されてきた背景は、販売会社が売りやすい商品を運用会社が作ってきた状況であり、力関係では販売会社の方が強いということだと思います。しかし、これからは販売会社と運用会社の力関係も、アメリカのように同程度になっていかなくてはいけません。

運用会社の地位が向上していくには、運用会社も当然、運用力をきちんと上げていく必要があります。そして、運用力を上げていくためには、ファンドマネージャーの意識の向上も重要です。

例えば、「自分は勇気をもって人とは違う運用をする」というファンドマネージャーがたくさん増えてくると、特徴のある運用会社も現れてくるでしょう。全ての運用会社が、株式、債券、REITなど、様々な資産クラスを運用するいわゆるデパートメント型である必要はありません。アメリカには、中小型株式だけ、債券だけ、REITだけといったように、自分に自信のある運用だけに特化したブティック型の運用会社が多数存在します。

特定の資産クラスに強いブティック型の運用会社の商品でも、十分なパフォーマンスを上げることが出来るので、ブティック型のような特徴のある運用会社がもっと増えてくる環境になればいいと思います。ファンドの分配金に対する考え方も、「毎月や四半期等で分配金を出すのではなく、分配金は一切出しません」というようなファンドがもっと増えてもいいと思います。

つまりキャピタルゲイン追求型の複利効果で運用するというファンドです。それが中長期で資産を形成していくには最も望ましいわけですから、そこで理解を得た販売会社に「売りたいのなら、売らしてあげますよ」と言える運用会社が出てきてもいいのではないでしょうか。今までは運用会社が販売をお願いしていましたが、これからは、運用会社が自信を持ち「自分の考え方と一致しないのなら売らなくてもいいです」と言える立場になれば、より好ましい状況になるでしょう。