―今のお話しの中で、実際にブティック型の運用会社が日本でも芽は出つつあるのでしょうか。

朝倉 :最も特徴のある例が、さわかみ投信です。さわかみファンドという商品が、澤上篤人さんのブランドで大きく残高を伸ばしました。この会社の特徴は、一本の商品だけを運用している点です。運用会社はさまざまなファンドを立ち上げたくなるものですが、さわかみ投信は一本だけに特化して、運用に自信のあるもの以外は一切運用しないというスタンスです。日本株の運用にはとにかく自信がありますという表明でもあります。

他にも特色のある運用会社が出てきています。鎌倉投信、コモンズ、セゾン投信といった販売会社を通さずに直接投資家にファンドを販売する、いわゆる直販投信の残高が増えてきています。こういう会社の存在感が上がってくると、投信業界も面白くなってくると思います。

ただ、直販系の多くの運用会社が日本株で運用する投資信託です。今後、日本から距離的にも遠い欧米の株式や債券の自前運用は難しくても、アジアやアセアンの株式や債券を運用する直販系の運用会社が出てきてもおかしくないと思います。国内でも、投資家は中小型の銘柄を適切に選ぶのは難しいですから、中小型に特化した運用会社も出てくると面白いと思います。

―アジア株の直販ファンドみたいなものがあると面白いという話を、ほかの投資家から聞いたりしています。アジア株も含めて、もし「こういったファンドがあればよりいいのでは」というお考えがあればお聞かせください。

朝倉 :新興国の中でこれから成長する地域といえばアセアンです。もちろんアジアの中心の中国・インドは新興国の先頭を走っていますが、その周辺国のアセアンはこれから面白い地域だと思います。インドネシアやタイ、マレーシア。そして、ベトナムやミャンマーなどはこれから大きく成長する国だと思いますし、更にフロンティアな市場ですと、バングラディシュやスリランカ等もアジア圏で、これらの国や地域に特化した運用を行う運用会社が出てきてもおかしくないでしょう。

またアジア地域に特化したリートや、ヘルスケア関連銘柄の運用に強い運用会社も魅力があります。日本ではヘルスケアリートがこれからどんどん上場してきますが、タイやマレーシアなどの地域には、医療機関を束ねた上場会社が多く存在しています。周辺国や中東の富裕層を呼び込み、一週間や一ヶ月かけて検査入院する仕組みを提供するメディカルツーリズムというツアーがあるほどです。また漢方薬などの薬は中国でもいい会社がありますし、そういった会社に投資をするヘルスケアファンドを運用する運用会社です。