投資家の資産運用を支える新たなIFAサービスとは?

―ところで、最近IFA(Independent Financial Advisor)という独立系フィナンシャル・アドバイザーの活動が広がってきており、今まで以上に投資信託を中立的な立場から販売するといった可能性があると思うのですが。

朝倉 :確かに日本の投資信託の課題のひとつとして、独立系のファイナンシャル・アドバイザーが少ないことが挙げられます。アメリカには、IFAが数十万人規模で活躍しており、投資信託全体の販売シェアでも30%程度握っています。そうしたIFAは、もともとは大手のメリルリンチ証券やモルガン・スタンレー証券などの証券会社や、シティバンクやバンカメといった大手の銀行に勤めていた方々で、金融や投信に関する知識も非常に豊富です。

IFAの良い点は、どこの証券会社・銀行にも属していないために、完全に中立的な立場でファンドや銘柄を選ぶことができます。メリルリンチに在籍していれば、メリルリンチの親会社の運用会社のファンドを積極的に売らざるをえなかったわけですが、中立的な立場であれば、投資家本位のファンドを提供できるわけです。

日本は大手の金融機関の系列の力が未だに強く、投資家が独立系の運用会社に慣れていないということもあります。IFAは投資家一人一人に対してコンサルティングを行うことで、例えば「一時間1万円」というようにアドバイスフィーをもらいます。投資家からしてみれば、なぜアドバイスにお金を支払う必要があるのかと不思議に感じるわけです。証券会社や銀行なら無料でアドバイスしてもらえますから。でも、例えば銀行の店舗に行って、販売手数料3%、信託報酬2%のコストのかかるファンドを勧められたとします。

ところがIFAが、顧客に最適なポートフォリオをインテックスファンドで作成し、結果として「ノーロード(販売手数料ゼロ)で、信託報酬全体が0.3%」となれば、1万円程度のアドバイス料金がかかっても、結果的に大幅にコストをおさえられます。先の例で銀行の店舗で購入した場合のコストは100万円購入したら、販売手数料3%で3万円、信託報酬2%で2万円、合計年間5万円支払うことになります。日本では、まだまだ個人投資家にそのあたりの意識が足りないと思います。

もちろん、IFA側ももっと勉強する必要があります。投信や株式は簡単だと考えているアドバイザーもいますが、実際にはよく理解している専門家は少ないです。独立のファイナンシャルプランナーで、生命保険や住宅ローンの専門家、またはライフプランニングをアドバイスする方は結構います。ただ、適切なファンドや株の選び方やポートフォリオの作り方などを、きちんとアドバイス出来る人は意外と少ないです。

投信や証券の専門家がもっと増えなければいけません。証券会社のOBや、銀行を退職して何もされていないなら、IFAの道を考えてもいいと思います。OBや退職者を集めて、コンソーシアムを作って、IFA専門の会社を作っても面白いと思います。

―マーケットについて語れるIFAという存在は非常に貴重だというお話からすると、金融商品やマーケットについて語ることができればIFA自身の競争力の強化にも繋がるということですね。

朝倉 :そうですね。あと一点IFAは最終的には投資アドバイスをしなくてはいけません。個々人の資産やキャッシュフロー、リスクの考え方などについて話を聞き、「少額でもいいから積立でやっていきましょう、ではあなたのポートフォリオを・・・」と言った瞬間に、投資アドバイス、投資顧問のライセンスの必要性が出てきます。

例えば、ポートフォリオを作り「国内株式型ファンドはこのインデックスファンド」と言った瞬間に、投資顧問のライセンスに抵触してしまいます。ファイナンシャルプランナーは投資顧問のライセンスを所有していなければ、投資アドバイスはできません。

―ファイナンシャルプランナーの資格と投資顧問のライセンスがあれば、両方からのアプローチで顧客、投資家にサービスすることができるということですね。

朝倉 :ファイナンシャルプランナーと投資顧問のライセンスを取得していると詳細なアドバイスができます。確定拠出年金を例にすると、従業員が確定拠出年金において、自己責任で運用しなければならないとします。「ファンドのラインナップがうちの会社には10本ありますから選んでください」といきなり言われても、そう簡単に適切なファンドを選べません。

今まで預貯金しかやったことのない人からすれば投資信託を選べと言われても難しいですし、IFAもファイナンシャルプランナーが投資顧問のライセンスを持っていなければ対応は不可能です。こうした状況でジレンマを抱えているIFAはたくさんいますので、投資顧問のライセンスも含めて、何か打開策を考えていかなくてはいけません。

私どもは、子会社のモーニングスター・アセット・マネジメントが投資顧問のライセンスを持っているので、「ポートフォリオをこうしましょう、20代のおすすめはこれです、このファンドは買ってもいいですが、このファンドは買わなくていいです」とアドバイスが出来ます。実際に、確定拠出年金採用企業からの投資アドバイスへのニーズは非常に多くなってきました。