「単価」を下げずに「数量」を下げてコスト削減

いわゆるコンサル会社にはない独自性は他にもある。同社は物流コスト削減を手がけるにあたって、必要以上に「単価」を下げることはしないという。「単価×数量」がコストとなるわけだが、長年、単価競争を繰り返した結果、物流業界の給与水準は極端に低いという。この、単価水準を下げ、給与水準もさらに下がり……、という傾向を助長してしまっては「社会的に意味はない」との考えから、同社では効率改善によって「数量」を引き下げるコスト削減策を設計し、提案・実行している。物流会社であれば売上が大きい方がよいが、同社は物流会社ではなく、メーカー側のスタンスである。物流売上ではなく、物流コストの適正化を重要視しており、その上で効率改善によるコスト削減はいたって妥当な提案なのだ。

無駄の多い仕組みの中に多数のマージンが重なって、それらの積み重ねがサプライヤーにのしかかっているのが、今日の日本の物流のあり方だ。これは、製造者・生産者から消費者へ、より安く、よりスムーズに商品を届ける余地があることを意味する。同社は物流の在り方を見直すことで、業界のバリューチェーンをスリム化し、日本の製造業がより強い企業体質に変革できるよう貢献しようとしている。


今後は中小企業への支援をさらに強化

順調に成長を続ける同社だが、今後はこれまで以上に「中小企業」への支援を強化したいと考えている。同氏は「今後3年間で中小企業100社が参画できる共同物流プラットフォームを構築することが目標」と語る。

物流業務は倉庫などの拠点数や人員など、ある程度の経済規模があってはじめて改善を図れることもあり、これまでは、年商一百億~5百億円規模の、中堅以上のメーカーがクライアントの多くを占めていたという。しかし、同社設立当初から同氏の視線の先にあるのはより小さな製造業や農業事業者だ。

「日本には、素晴らしいモノづくりをしている方たちがたくさんいます。しかし、消費者のもとに届くまでにどれだけの中間マージンが入り、流通コストが乗るかを考えると、やっぱり大企業の商品の方が安く手に入る。小ロットしか生産できない中小企業の商品は、消費者にとっては高いものになってしまう」と語る同氏。もともとの物流費が少なくても、複数の企業を集めることで1社あたりのコストを削減できるといい、具体的には、在庫を共有したり、1台の車両に荷物を相乗りさせたり、システムを共同で運営したりといった共配のスキームを提案する。さらに、「生産と営業の結果が物流に表れる」ため、物流の見直しを通じてその企業のマーケティングや生産に関する課題が抽出され、その後の商圏拡大などの戦略をサポートすることもできるという。

「物流」ではなく「流通」へ、同氏の胸にある理想の同社は「物流コンサル会社」ではなく「流通強化のサービス会社」だ。「中間流通構造の革新に向けた支援を拡げていくことで、優良なモノづくりの製造メーカーや生産者に貢献することが当社の使命」と語る。