楽な環境を自ら破棄する「勤勉宣言」は内部的にも驚嘆をもって迎えられた。日本人はやはり真面目な人が好きであるし、敬意も抱く。就任早々の3月19日に行われた最初のメンバー発表記者会見では、そんな新監督の特徴を印象付けるコメントがあった。

「このメンバーリストを作るために、スタッフが寝ずに準備をしてくれた。各個人に役割があってそれを要求している。そして本当に協会の人が寝ずに多くの仕事をやってくれている。それにはショックを受けた」

これを“ちょっといい話”と解釈するべきなのか逡巡してしまうが、褒められたスタッフにしてみると、悪い気はしない言葉だろう。自らハードワークを実践し、部下にもハードワークを求める。どうやらこれがハリルホジッチ監督の基本軸だ。

代表合宿がスタートしてからも、周りを驚かす出来事があった。なんと代表選手に混じって62歳の指揮官は一緒にランニングに参加。当然のように周回遅れになってしまうのだが、それでも最後まで走り切る姿勢を見せて選手たちを鼓舞した。練習に訪れていたファンもその様子に感銘を受けていたほど。そして試合では、本田圭佑と香川真司という日本の二大スターをいきなり先発から外し、公平な競争が始まることを、言葉を使わずに宣言。停滞感のあったチームに火を付けてみせた。

ハリルホジッチ監督が就任から一貫しているのは、「やる気」(これはどうやら監督の口癖だ)を示すこと。4月11日には「日本サッカーを理解するため」として高校生のリーグ戦にまで顔を出し、関係者を驚かせた。

監督が「いま日本のフットボールは少しデリケートな状態になっています」と語るように、日本サッカーの現状は好ましいものではない。これから少子化の影響は確実に出てくるだろうし、日本経済自体の地盤沈下はJリーグにも波及している。経済力でアジアの追撃を受けることは、サッカー力での追撃を受けることでもあると痛感させられる状況も続いている。

そうした日本サッカーについて「私は厳しいことも言います」と語るハリルホジッチ監督だが、同時に「批判するのは簡単なんです。でも一緒に働いているのですから、ディスカッションしていかないといけない」とも言う。厳しく言うし、ハードワークも求めるが、「一緒に戦う」という姿勢は崩さない。どうやらこれがハリルホジッチの流儀のようである。

川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から本格的にフリーライターとして育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。育成年代も勢力的に取材している。

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