問題が顕在化した事例

この問題が顕在化したのが、例えば、オリンパス訴訟や青色ダイオード訴訟である。青色ダイオードは未開発だった青の生成に成功した。これで光の三原色である赤緑青の全てが完成し、これによりこの世に存在するほとんど全ての色を作り出せることになった。

これほどの成果にもかかわらず、当初、中村修二氏(2014年ノーベル物理学賞受賞、カリフォルニア大教授)は、日亜から2万円の「相当な対価」だけを受け取っただけだった。このことで、アメリカの友人研究者から「スレイブ(奴隷)ナカムラ」とからかわれるほどであった。

そして、中村修二氏と日亜化学工業の特許訴訟に発展していく。東京地裁は、日亜に200億円の支払い判決を下した。その後、結局は和解が成立し、8億円ほどとなった。

産業界側は考えた。これでは利益はなくなる。特許法を改正すべきだと。

そこで、会社と従業員が、特許権の譲渡に関して「相当の対価」の額の決定をした際、「それが、妥当な話し合いで決まった場合は、後で(退職後などに)、更に金を払えとの訴訟は出来ない」との法改正が成立した(1回目の法改正)。(H16年改正、H17年4月1日施行)。


世界の現状

なお、世界の主要国の現状はどうか。ザックリいうと、米国とドイツは発明者に原始帰属、一方、フランスと英国は使用者に原始帰属すると現行法は規定している。

しかし、この1回目の改正があっても、職務発明者による会社を相手とする訴訟はやまず、産業界は再度の法改正を願った。この法改正が、いわゆる2回目である。中村修二教授が一石を投じた問題にほぼ結論が出た。

特許庁が、職務発明の原始的帰属者を従来の社員から会社に変更する一方、発明した社員への報奨を義務づける双方の立場を尊重した方針を発表した。

結局、世界の趨勢は、「職務発明は会社のもの」になりつつあり、日本もそれにならった方向となった。ポイントは従業員に対する報奨をどう扱うかである。

余りに冷酷に過ぎると、頭脳の流出を招き、その組織のみならず、国としても不利益を被ることになる。いわく「和を以て貴しとなす」であろうか。(ZUU online 編集部)

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