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(この記事は2014年5月29日に掲載されたものです。提供: Biglife21

セクハラやパワハラの問題は、企業にとっても社会的信用などを含む大きな損失を招きます。企業にとって、こうした問題への対策は、決して軽視できないものです。今回は、弁護士としての立場から、セクハラやパワハラを事前に予防するために企業がどのような対策を講じるべきか、また実際に私が関わってきた事例など、そして万が一こうした問題が起こってしまった場合の対応などについてお話ししていきます。

特に、当コラムの主要な読者層である中小企業や町工場を経営する皆さんに向けたお話をできればと考えています。

はじめに、なぜ中小企業や町工場の経営者の方々にこのような話をするのかを話します。会社の従業員が社内でセクハラやパワハラをすると誰が被害者に対して責任を負うのでしょうか。当然、セクハラやパワハラを行った本人は責任を負います。これに加え、加害者を使用している雇用主である会社や事業主も、「加害者の使用者」として被害者に対して損害賠償などの責任を負わされます。使用者がその責任を免れるためにはセクハラやパワハラを防止するために十分な措置を講じていることが必要なのです。

セクハラやパワハラの予防策としては、研修などによる周知の徹底といった社員教育が何よりも重要です。可能であれば、定期的に研修や勉強会などを開催することが望ましいでしょう。また、被害者が立場上の不利益を心配することなく相談できる窓口など苦情処理の体制を社内に整えておくことも必要です。しかしながら、特に零細企業や中小企業の場合は、大企業に比べるとこうした研修を行っていたり、苦情処理の体制が整っていたりという割合は低くなっているのが現状です。

次に、これまでに私が対応してきた実際の事例をご紹介していきましょう。性的な嫌がらせであるセクハラについては、身体的な接触、性的な話をする、ヌード写真を見せるなど、明らかに問題のある言動のほかに、注意点としては職場以外の場所や就業時以外の時間であっても、例えば会社の飲み会などでのちょっとした冗談や身体的な接触も、十分に該当する可能性があります。これはパワハラに関しても同様で、身体的な暴力に限らず、部下に対する叱咤激励のつもりが、パワハラとなる事例も少なくありません。

このほか、地位や上下関係を利用して、配置換えや部署替え、昇進や昇給を妨げるなどといった不利益を与えることや、また例えば一日中コピーを取らせるなど、その人の能力に見合わない仕事しか与えないなども、パワハラに該当するケースがあります。

基本的には、被害者が嫌がらせであると感じた時点で、セクハラやパワハラの問題に発展する可能性が生じます。加害者側は、セクハラを受けた被害者は嫌がっていなかったなどと言う人もおります。しかし、上下関係などの理由によりはっきりと言えなかったと言われてしまえば、言い訳にすぎなくなります。

では、実際にセクハラやパワハラの問題が起こってしまった場合には、どのように対応すべきでしょうか。企業としては、あくまでも中立の立場を取り、一方の訴えを鵜呑みにしてはいけません。まずは事実の確定が必要です。

当然、加害者に対しては、解雇や減給をはじめ当該人物の不利益となる措置を行うことになります。この措置が、事実ではない訴えに基づいたものであったと判明した場合は大きな問題になりますから、まずは事実の確定を慎重に行っていくことが重要なのです。また、万が一裁判になった場合、セクハラやパワハラに関しては明確な基準がないため幅があるとはいえ、数十万円から数百万円の損害賠償になった判例もあります。

現在では、労働審判という制度もあり、労働問題を裁判所に申立てることは比較的簡単になっており、被害者が司法の場に訴えやすい環境が整っています。企業としては、可能であれば、法的な問題に発展する前に、被害者が気兼ねなく相談出来る窓口や、また管理職を交えて当事者間で話し合うなどして、他部署に配置するなど何らかの処置を取り、解決を図ることが望ましいと言えます。

しかし、特に中小企業の場合は、社員数が一桁などごく少人数である場合も多く、専門の部署を設けたり、部署替えなどの対応を行ったりといった対応は事実上、難しい場合が殆どです。

これらのことから、研修や社員教育による、予防の重要性、問題が起きない環境づくりの重要性がお分かり頂けたかと思います。多額の損害賠償が生じたり、貴重な社員を失う結果になったりと、中小企業にとっては死活問題となる恐れがあるのがセクハラやパワハラの問題です。普段から管理職を含む従業員への知識の周知や教育を徹底していくことは、ある程度の予算を割いたとしても、甚大なリスクを回避するためには検討の価値があるのではないでしょうか。

(ZUU online 編集部)

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