「ITpro」ニュースによると、2014年10月28日に開催された金融庁の企業会計審議会総会で、IFRS(国際財務報告基準)任意適用の促進に向け、新たな『会計部会』を企業会計審議会内に設置することを決定した。本稿ではこの決定の意味。なぜIFRSの“強制適用”ではなく、“任意適用”が促進されるのかを紐解いていく。


IFRS適用に関する従来のスケジュール

IFRSは国際会計基準審議会(IASB)にて設定、審議されている会計基準である。株式投資等のグローバル化が進行するにつれ、従来各国で異なる会計基準を統一し、企業間比較等をしやすくして、投資判断の意思決定を容易にするのが目的である。

各国の採用状況は、米国ではIFRSの適用が認められている(任意適用)状態。欧州主要国(ドイツ、イギリス、フランス等)では2005年から適用開始。ブラジル、インド、シンガポール、香港でも採用済。韓国は2011年以降、上場企業にIFRS基準での財務諸表の作成を義務付けている。

日本では従来、2010年3月期よりIFRS任意適用を容認する一方、強制適用の是非を議論してきた。しかし、今回の総会では、当面の方針として「任意適用要件の緩和を行い、適用対象企業を拡大する」ということが出された一方で、「IFRS強制適用の是非等については、未だその状況を判断すべきではない」という決定も下されている。いわば、任意適用から強制適用への段階適用から、任意適用の拡大による実績の積み上げに方針を変更したと言える。


米国の方針待ちと日本の発言力の強化が狙い

ではなぜ、IFRSに関する方針を変更したのだろうか?その背景にあるのは米国のIFRS導入が最終決定されていない点と、日本の発言力強化の2点である。現在、主要資本主義国の中でIFRSが任意適用であるのは、日本と米国だけである。

2013年1月の米国「Journal Of Accountancy」の記事によると、SEC(米国証券取引委員会)がIFRSを米国で適用するべきかの判断に関して、さらなる研究と議論が必要である、との見解が出されており任意適用にとどまっている。このような状況で日本が先行してIFRS適用を行うのはリスクが高いという判断がある。

その中で、金融庁の方針としては「IFRS策定への日本の発言権を確保していくことがとりわけ重要」であり、任意適用企業を拡大することで発言権を大きくしようとする意図がある。

今回、任意適用要件のうち、「上場企業」「国際的な財務活動・事業活動を行う企業」の2要件を廃止することで、対象企業数を621社から4,061社に拡大した。この数は平成25年度末の上場企業数3,550社を超える数字である。さらに、東証が新しい株価指数として採用したJPX400において、IFRSの採用がJPX400に採用する場合の加点要素として加えられている。

このように、米国の意向を考慮して日本は任意適用を拡大することで発言権を強化するという狙いが、今回の決定につながった背景である。


企業主導でない今回の決定

しかし、今回の決定は、金融庁と企業会計審議会が米国の動向を受けて制定したものあり、企業主導でない決定であると言える。今回の決定を受け、各企業におけるIFRS適用が拡大するかが注目であり、適用拡大が進まない場合は、何らかの修正が行われる可能性がある。

(ZUU online 編集部)

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