ヨーロッパを起点に世界へ

他の事業も徐々に立ち上がってきて、世間的に見れば順調に歩んできたと思われるプリンシプルも苦労の連続だったことがわかる。さて、その成長戦略は今後どのように変化していくのだろうか。

「2012年の暮れに津市や三重県主催でヨーロッパに視察に行く機会がありまして、その時に知り合ったフランスにある内視鏡関係のベンチャー企業を率いる社長と意気投合いたしました。その社長には日本にも来てもらいまして、お互いの技術を見せ合い、じゃあ一緒にやろうということになりました。技術提携したのです」

この取材の3週間前にも中西氏はフランスに渡っている。その企業との具体的な取引き、新商品についての商談のためだ。欧州の人間は文化的にみんなでやろうという仲間意識のスタンスがあるということを実感した。技術力と商品力があれば欧州とも貿易ができるという実績を作っておきたいと考えたことが、いよいよ実現の運びとなった。

「やはりこれからは世界のベンチャーとの連携も必要。私は日本の若い人に国内だけでなく、もっと世界に目を向けることを学んで欲しいのです。また、いくらネットワーク時代になろうとも、やはり自分の足で情報は取るという基本動作が重要であると実感しています」


メーカー志向のもとは、『迷ったら「イエス」と答える』こと

「私のモットーは、問いがあったときは『すぐにイエスと答えること』。戦略は『まずやることで、意志決定をする』、戦術は『無限大にある。その戦略を具現化する方法である』という3つです」

3年前にFA関係の仕事をしていたある会社からM&Aの話があった時も「イエス」だった。わずか一週間で工場を探して移転させ、仕事を再開させた。その決断力や行動力は人並みはずれたものを持っている。これまでの様々な苦労や経験がそうさせたとも言えよう。

「新しいことに挑戦するときはいつも、悩み苦しみながら経験や失敗を重ね、自身と向き合わなければ成し遂げられません。けれど、その先には必ず楽しさや幸せがある。これまで新たな出会いによってアイディアが生まれ、チャンスへとつながっていく、そんな多くの場面に遭遇してきました。個人も企業も、すべては出会いとチャンスの繰り返しだと私は思っています」


プリンシプルの今後の目標はなんだろう。

「今はまだ仕事全体の9割方が受託設計製造です。この割合を5割までもっていこうと思っています。私の夢でもあるメーカーを目指したいのです。その考えは今年の初めに私の中できちっと形になりました。『モノづくりは日本の心、産業機器から医療機器まで感動してもらえるような機器を構築しながら世界に貢献しよう』と」

まずひとつの柱となる医療機器については、内視鏡洗浄消毒・乾燥滅菌機とメンタルヘルスの分野、とくに脳波と自律神経関係に特化したオリジナル商品を開発・製造・販売していくという。洗浄消毒といっても介護施設や家庭でも注目されている空間除菌などいろいろある。現にプリンシプルでいま製造販売しているものは耳鼻咽喉科用の内視鏡消毒機だけだが、内視鏡についてでさえ泌尿器・気管支・消化器用など、開発テーマは多岐に及ぶ。

さらにまだまだ改良したり、新しい機能を付加し、大きな問題にもなっている看護士のワークライフバランス向上にも役立つ商品開発も決まっている。またメンタルヘルス分野では、画期的な脳波測定器を開発した。これは脳のセルフチェックによって健康生活を追求できる機器で、短時間で人の資質を客観的かつ正確に評価する機器として、企業や介護施設、病院、学習塾など各方面から注目を集めている。

加えて本誌11月号で登場した野村由美氏が代表理事を務める日本エナジーテラピー協会との連係も視野にある。

産業機器では自動車関係を中心としたグリス塗布装置、プライマー装置、各種自動検査装置の開発・製造を推進している。