ドル高・円安が進んでいる。今後、為替レートはどう動くのか? それにより、世界のGDPシェアはどう変わるのか? ファンドマネージャーの筆者が、世界を歩きながら通貨価値の本質を探る。

現在のテクノロジーでは経済の全体像を完全な形で捉えることはできない。どれだけ高度で複雑な数式を用いても、前提となる現実理解が間違っていれば破綻してしまう。月から地球を眺めるようなマクロの視点に加え、地域の生活に溶け込むようなミクロの視点が必要だ。


ドル高に伴う中国の物価高

2012年5月、ウォーレン・バフェットの話を聞くためにアメリカ中西部のオマハという街を訪れた。その時に街の商業施設を見て回ったのだが、1ドル=80円での物価の安さに驚かされた。その後3年で50%以上のドル高円安が進行し、商品の割安感は消えた。物価調整という意味での円安圧力は弱まっており、一方的な為替予測は難しくなっている。長期的な円安トレンドは続くが、一時的な揺り戻しはあるだろう。

ドル高に伴い中国人民元も上昇している。2015年5月、CEIBSという経営大学院での3日間のプログラムに参加するため6年ぶりに上海を訪れた。人民元が上昇した影響で、物価が非常に高く感じられる。一番驚いたのは不動産価格の高さだ。2009年に訪れた際も安くはなかったが、そこからさらに上がっている。信じられないくらいの値段になっていた。