中国の街で経済発展を実感
上海の後、中国内陸部の河南省にある鄭州という街を訪れた。中国の経済成長を実感すべく、2002年から定点観測している街だ。13年前に初めて訪れたとき、高層ビルはほとんどなく、泊まっていた安宿の窓からは多くの人が自転車で通勤する風景が見られた。
2009年の再訪時、街の表情が大きく変わったことに驚かされた。灰色の空の下に何百という高層ビルが出現し、メインストリートは舗装され、若者向けの明るい店が並んでいた。多くの人が自転車から自動車に乗り換えていた。7年で中国のGDPは2倍になったのだ。
2009年から2015年にかけても、鄭州の経済は着実に成長していた。グッチやカルティエなど高級ブランドが進出し、高層ビルが立ち並ぶニュータウンの中心に60階建ての超高層ビルが完成、そこに最高級ホテルがオープンしていた。高層ビルの数は激増し、建設はまだ続いている。人民元で買えるものは増え続け、その多くが高級品だ。内陸部でも物価は高い。
これまでの力強い経済成長を背景に、中国は今後10年あまりでアメリカを抜いてGDP世界一になると予測されている。だが、膨大な負債を伴いながら増え続ける高層ビルを眺めていると、今後も成長を維持していくのは簡単なことではないように思える。人民元が完全にフロートし、為替レートが下落することになれば、ドル建てのGDPも縮小することになる。はたして人民元は今後も価値を高めていけるのだろうか?
通貨価値の本質とは
経済発展は人民元の購買力に好影響を与えている。商品やサービスの種類は増加を続け、商業施設は増え続けている。取引が近代化・国際化し、障壁が減り、誰もが同じ条件で買えるようになれば通貨の価値は上昇する。また、クレジットカードや電子マネーなどの技術進化は通貨の利便性を向上させる。
一方で、人民元にはリスクもある。為替レートは現在と将来の購買力を反映して動く。金利が高ければ将来の購買力は増加する。インフレになれば購買力は失われる。1871年に新貨条例で誕生した「円」は、インフレの波に押され、その後70年あまりで1ドル=1円から1ドル=360円まで下落した。中国は政府債務を抑制し、インフレをコントロールできるだろうか?
かつて通貨は金や銀に裏付けられていたが、現在は政府や中央銀行の通貨価値に対する姿勢が問われている。基軸通貨となった米ドルの信認は、アレクサンダー・ハミルトン以来の200年以上にわたる財政規律に裏打ちされてきたのだ。世界一の経済大国への道のりは長い。
※当記事は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
高橋忠一郎
外資系資産運用会社シニア・ファンドマネージャー
公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員 (ZUU online 編集部)
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