独占状態のビジネスモデル

同社のようなサービスを行うには、システムについて企画やプランニングから構築・製造、そして運用・保守まで、上流から下流に至るすべての領域をカバーするスキルが必要だ。エンジニアにはプランニングはできないなど専業化されているIT業界において、これを満たす人材は少ない。

また、IT業界は中流域である構築や製造のプロセスに6~7割ほどの人材が集中している。これに対し同社のビジネスは、プロジェクトの計画段階や要件定義・設計といった上流工程主体でクライアント内に入り込み、クライアントの立場でIT業界側からの提案や営業に適切に対応するサービスだ。このビジネスモデルは狭義では競合はゼロ、独占状態だという。層の厚い部分を避け、競争を回避しての創業は見事というほかない。

さらに、同社のビジネスは、ブルーオーシャンだからと追従したところで一朝一夕で模倣できるものではない。高度で幅広いスキルが必要なことに加え、たとえば大企業が同社のビジネスを行おうとした場合、社内の各部署から優秀な技術者を選抜してチームを新設するほかなく、割に合わないのだ。同氏が「大手は参入してこないと思っています」と語る中小企業ならではの強みがここにある。


「ITもBPOを」今後は支援から代行へ

当初、あくまでもITの難しい部分のみを「支援」するものとしてスタートした同社のサービスだが、起業して6年間が経過するうちに、「IT関連業務を組織ごと同社に任せてしまいたい」という要望が増えてきたという。

こうした声を受けて、すでにIT業務全体を丸ごと代行する形で関わっているクライアントもあるというが、IT業務全体を請ける場合、特に高度なスキルを要しない部分も多い。そこで同社では、そうした部分を担当する要員として200名ほどを協力会社で調達し、本来の「支援」サービスで携わっていた高度なスキルを要する部分についてのみ、同社のプロパー社員が担当している。

こうして体制を整えた同社は、今後はこうした「代行」のサービスを推し進めるという。総務や人事、経理などを専門企業に外部委託する「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」を活用する企業は増えているが、「ITもBPOを」という発想だ。同氏は「ITは組織ごと当社に投げて、お客様は本業に専念してほしい」と語る。


「来期の目標は30億円」業績は極めて順調

1月には7期目に突入した同社。立ち上げ時にターゲットとして描いていたユーザー層も狙い通りに獲得でき、収益もほぼ計画通りに推移している。これまでは極めて順調だという同社の業績は5期目が10億円、6期目が15億円。同氏は「当初考えていたよりもはるかにニーズがあった」といい、来期の目標として設定している30億円も決して非現実的な数字ではないという。

創業の着眼点は満点ともいえる同社、今後売り上げを伸ばすためには、いかにサービスのクオリティーを落とさずに、提供する量を増やせるかが勝負となる。社員数については現在38名まで拡大し、その全員が技術者だ。現在は社の未来を担う若手の採用に力を入れているといい、同氏は「30歳前後で、ある程度得意分野を持っている人材。幅を広げれば戦力になるな、という人材を採用しています」と語る。