物価 2%の日銀目標の早期達成は困難

総賃金の拡大と円安の効果により、1%程度の物価上昇の中期的なトレンドは継続すると考える。デフレを脱却していることを家計と企業が実感し始めることが、内需回復を加速させるだろう。消費者物価指数(除く生鮮食品)前年同月比は2015年半ばには一時的にマイナスになる可能性がある。2015年後半からは物価上昇率は持ち直すと見られる。しかし、その持ち直しは、日銀の目標である2%の安定的な上昇の早期達成のためには弱すぎるだろう。2%程度の安定的な物価上昇には、失業率が3%を十分に下回り、賃金インフレが強くなる必要がある。その達成は、次回の消費税率引き上げ後の2018年度になると考える。


金融政策 追加金融緩和が実施される可能性が高い

2015年度後半には、物価上昇率の持ち直しが弱いことが確認され、日銀は追加金融緩和に再び踏み切ると予想する。物価の一時的な下落により、期待インフレ率が低下するリスクが大きくなることが後押しとなろう。その時点で、目標の達成時期を「2016年度前半頃」から、「2016年度を中心とする期間」へ正式に後ずれさせ、その実現をより確かにするための追加金融緩和という位置づけを明確にするだろう。

FRBの利上げ開始により、日銀が緩和の「量」をそれほど増やさなくても金融政策の「方向感」の違いを示せば、円安を含む追加緩和効果は十分出るだろう。マネタリーベースの増加幅は現在の年80兆円程度から85兆円程度へ変更となるだろう。この5兆円の内の大部分がETFを中心としたリスク資産の増加で、「質」的緩和の度合いが強くなるだろう。構造的なデフレ完全脱却は2016年に達成し、2017年4月の消費税率引き上げ後、日銀は2%の物価上昇が確認される2018年度から量的金融緩和を縮小、2019年度に利上げに転じると予想する。