6月10日、衆議院財政金融委員会に出席した黒田総裁の答弁で一気にドル円が急落する展開を見せることとなった。黒田総裁は民主党の前原議員の質問に答える形で「さらに円安が進むことはありそうに ない」と発言。
さらに、「永久的な量的・質的緩和は考えていない」「付利金利の引き下げは検討していない」と追加緩和に消極的と見られる発言をした為、この内容が通信社のヘッドラインに流れると市場は一気にドル売り円買いを進め、午後5時前には1ドルは122円459銭をつけた。
黒田発言は完全にドル高けん制の確信犯答弁?
1990年以降日本は2回円ドルに対して円買い介入をしている。1回目は1991年で2回目が1998年であったが、どちらも130円を超えたレベルで介入を実施しており、先週末の米国雇用統計後の126円にきわめて接近した相場はそこから4円も円高水準に進んでいる。
過去の事例に従えばそろそろ円買い介入がでても不思議ではないゾーンということになるし、TPP交渉を控えてこれ以上ドル円の上昇を望まない日米政策当局の思惑から考えればこのタイミングで要人の発言から口先介入が登場してもなんら不思議はない状況といえる。黒田発言はこのタイミングを図ったものだったのではないだろうか。
130円レベルでの円買い介入の可能性はほとんどゼロ
ただし、現実的にドル円が高くなったから円買い介入をできるのかといえば今回の上昇局面ではかなり難しいと言わざるを得ない。現状で2%の物価目標も達成しない中にあってはアベノミクスの唯一の成果物が株価の国策的買い支えによる2万円相場の示現であり、最近の株価上昇は円安が主導して実現した相場であるとも言われるだけに、ここで円買い介入などをすることで株価まで押し下げるきっかけとするわけにはいかないのは明らかだ。