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(写真=PIXTA)

◆昨日は、良好な米小売売上高を事前に織り込む動きから、発表に向けてドルが上昇した後、発表後は市場予想を上回る好結果だったにも拘らずドルは概ね反落方向となった。

◆ドル/円も、前日の黒田総裁発言を受けた円高で122円台後半から始まった後、ドルショートカバーの動きから欧米時間にかけてじりじりと123円台半ばへ反発、米小売売上高発表後は一時124.13円へ続伸したが、その後米中長期債利回りが急反落したこともあって、123円台前半へ反落した。

◆本日は、昨日の米小売売上高に続き米消費者信頼感指数が注目で、回復はドル下支え要因だが、ドル/円は124円台では黒田総裁の円安牽制が意識されやすく、上値は限定的となりそうだ。


昨日までの世界:米小売売上高の予想比上振れ後に米金利とドルが反落

ドル/円は、前日の黒田総裁による事実上の円安牽制発言を受けた円急騰で122円台後半から始まった後、本邦当局から特段の追加発言がなかったことから、更なるドル安円高を見込んだ向きのドルショートカバーが持ち込まれたとみられ、欧米時間にかけてじりじりと123円台半ばへ反発した。

良好な米小売売上高を事前に織り込む動きもあったとみられる。結果は総合が前月比+1.2%と予想通りだったが、コア(除く自動車、ガソリン、建設資材)が+0.7%と市場予想(+0.5%)を上回り、冬場の悪化から回復が遅れていた個人消費もV字回復となったことが確認され、発表直後に一時124.13円へ続伸した。

もっとも、その後米中長期債利回りが急反落したため、ドル利食いが優勢となり123円台前半へ反落した。

ユーロ/ドルも、欧米時間にドル高基調となり1.13ドル前後から1.12ドル台半ばへ軟化、その後米小売売上高発表にかけてドルが続伸し一時1.1182ドルへ続落した。もっかことも、その後の米中長期債利回りの急反落を受けてドルも反落、ユーロ/ドルは1.12ドル台半ばへ反発している。

ユーロ/円は、対ドルで円とユーロの動きが概ね同程度だったことから、139円丁度を挟んで上下に振れる方向感のない展開となった。但し前日の黒田総裁発言前の水準である140.50円からは大きく下回った状態が続いている。

豪ドル/米ドルは、豪5月雇用統計が良好な結果となり、RBA政策金利と連動性が高い失業率が6.0%へ予想外の低下(市場予想は6.2%で横這い)をみせたことから、一時0.7793ドルの高値を付けた。この間、雇用者数も4.2万人増と予想の3倍程度の増加となったが、前月計数は-2900人から-1.37万人へ下方修正された。

もっとも、その後の米ドル高基調を受けて反落、米小売売上高発表に向けて一時0.7693ドルの安値を付けた。引けにかけては米ドル反落を受けて、0.77ドル台半ばへ反発している。中国5月主要経済指標では、固定資産投資が年初来前年比+11.4%と市場予想以上に鈍化、やや弱い内容だったが、豪ドルの反応は限定的だった。

豪ドル/円は、豪雇用統計を受けて95円丁度近辺から95円台前半へ反発し、黒田総裁発言前の水準を回復した。欧米時間もほぼ同水準を維持し、一時95.83円の高値を付けた。


きょうの高慢な偏見:ファンダメンタルズに沿わず不安定に推移するドル/円

ドル/円は、昨日の米小売売上高に続き、6月ミシガン大消費者信頼感速報が注目される。消費者信頼感は今年1月にピークを付けて以降、悪化が続いており、今回市場予想通りに悪化が一服・小反発するようだと、ドルの下支え要因となりそうだ。

但し、黒田総裁発言を受けて124円台での上値の重さが意識され易く、米日金利差(拡大方向)とドル/円(下落)の相関が崩れてしまっており、ドル/円の上昇トレンド再開には米国要因だけでは不十分かもしれない。

こうした状況はG20および本邦政府の過去からのスタンスである「為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが望ましい」というものと整合的でなくなっており、ドル/円相場は材料との関係が不明確で取引しにくい通貨ペア、という認識が広がるかもしれない。

ユーロ/ドルは、ドイツ10年債利回りが昨日1%台から0.88%へ反落したことから、一旦上昇圧力が後退しており、米経済指標を受けたドルの動向が焦点となりそうだ。

ギリシャ問題では昨日のTsiprasギリシャ首相とJuncker欧州委員長との間の会談が物別れに終わり、IMF担当者がブリュッセルを発ったと報道されるなど、進展がみられていないが、ユーロ相場の反応は限定的となっている。

豪ドル/米ドルは、鉄鉱石価格の持ち直し傾向に加えて、昨日の豪失業率の低下を受けて利下げ期待は後退し、豪2年債利回りも上昇してきている。一方で、昨日のRBNZの利下げを受けたNZドルへの連れ安に加えて、米消費者信頼感の回復の場合の米ドル高が上値抑制要因となり、方向感が出なさそうだ。

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山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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