Amazonは「日本型書籍流通」に一穴を穿つのか?

このように日本型の書籍流通は、返品自由の委託販売制度と、配本を司る取次制度のもと、日販とトーハンが流通を寡占してきた。出版社は全国の書店やコンビニに書籍や雑誌を流通させるために取次の2社に依存し、一方で中小企業の集合体である書店各社も、取次との取引によって数多くの出版社の本を一挙に集めることができたわけだ。

しかし、そこに一穴を穿こうと試みたのがAmazonだった。無論同社も、日本上陸当初は取次を通じていた。取次業界3番手の大阪屋を主要取次として取引を開始し、その後業界トップの日販を主要取引先としてきた。そのAmazonが、売上げの伸長とともに2006年より運営してきたのが直取引サービス「e託販売サービス」だ。


Webを背景に急成長する「e託販売サービス」

Amazonの「e託販売サービス」とは、登録をしているe託参加の出版社に、まずは需要予測に基づき納入を依頼する。そしてWebを通じて購入を希望してきたカスタマーに書籍を発送すると同時に、代金を出版社に支払う、という構造だ。

この業界ではこれまでタブーとされていた直取引を、堂々と出版社に対して打ち出したこのサービスの登録者は、発足後約8年強の間に3,000社に近づこうとしているという。そうした中でことさらにKADOKAWAの参加が話題となったのは、大手出版社としては初めての参加だったからである。


日販とトーハン、問われる生き残り策

このところAmazonの書籍流通への傾注が目立つのは、旧来の書籍流通にかかわる各社が取次の支援に力を入れていることへの焦りであるとの見方もある。だが実際のところ、巨大ネット小売企業のAmazonが業界の要である金融や物流の機能にまで触手を伸ばしつつある事実は否めない。さらにまた、その力を目の当たりにした出版社の方からも、Amazonとの関係を強化しようとする動きが活発化しているのだ。

これまで書籍流通業界を寡占してきた日販とトーハンが、大手書店や老舗出版社ばかりを優遇し、零細書店や新興出版社に冷淡である限り、業界自体が硬直化し、魅力を失ってしまうことは避けられない。取次の生き残り策は、そのまま書籍流通の今後を決することになる。

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