黒田発言のボディブロー
(写真=PIXTA)

◆昨日は、米FOMCでFF金利予測やGDP予測が下方修正されたことから、年内に利上げが開始されるとの見方は変わらないものの将来の利上げペースがより緩慢なものになるとの見方が強まり、米2年債利回りの低下と共にドルが総じて下落した。

◆ドル/円は、欧州時間からFOMCを控えて米中長期債利回りが上昇したことからFOMC前に一時124.45円の高値を付けたが、その後のFOMCのハト派化を受けて123.21円へ大幅反落し、結局東京時間の水準に逆戻りした。

◆ポンドは、英4月週間平均賃金が+2.7%と上方修正された前月および市場予想を上回ったことから上昇、更にFOMC後のドル安を受けて、対ドルで1.2%の上昇、対円でも193円から一時195円乗せへ上昇した。

◆本日はスイス中銀金融政策決定、英小売売上高、ECBによる資金供給オペ(テルトロ)、ユーロ圏財務相会合および米コアCPIが予定されている。

◆ドル/円は「黒田シーリング」である124円台半ばを上抜けできず上値の重さが意識されやすい中で、米コアCPIが市場予想を下回ると123円割れを窺う展開となりそうだ。

◆ユーロはギリシャ支援問題を巡る財務相会合で進展がないとユーロ安要因だが、来週への先送りはサプライズではなく反応は限定的かもしれない。


昨日までの世界:黒田総裁は前言撤回せず

ドル/円は、欧州時間からFOMCを控えてタカ派的な内容を警戒してか、米中長期債利回りが上昇したことからFOMC前に一時124.45円の高値を付け、6月10日の黒田総裁発言前の水準をほぼ回復した。

もっとも、その後の米FOMCで、FF金利予測やGDP予測が下方修正されたことから、年内に利上げが開始されるとの見方は変わらないものの将来の利上げペースがより緩慢なものになるとの見方が強まり、米2年債利回りの低下とドルが全面安となった。ドル/円も123.21円へ大幅反落し、結局東京時間の水準に逆戻りした。

ユーロ/ドルもギリシャ支援協議への懸念は燻るものの、米FOMCを控えて欧州時間までは概ね1.12ドル台後半で推移した後、FOMCの小幅ハト派化を受けたドル安により、一時1.1358ドルへ上昇した。

もっとも、6月10日の直近高値である1.1386ドルには届かず、6月半ば以降、1.12~1.14ドルのレンジ感が強まっている。

ユーロ/円は、欧州時間のドル/円上昇につれて138円台後半からじり高となり、FOMCの影響はあまり受けずに140.01円へ上昇した。FOMC後のドル安局面では、円とユーロがほぼ同程度上昇したようだ。

豪ドル/米ドルも、欧州時間の対円での米ドル高基調につれて0.77ドル台半ばからじり安となり、FOMC前に一時0.7646ドルの安値を付けた。もっとも、その後のFOMCの小幅ハト派化を受けて一時0.7770ドルへ急反発し、ほぼ元の水準に戻ったかたちとなった。

豪ドル/円は、欧州時間は鉄鉱石価格の反落基調もあってか豪ドル安基調となり、95円台半ばから95.04円へ軟化したが、FOMC後に米ドル安局面では円よりも豪ドルの方が大きく反発したことから、95円台半ばを回復した。

ポンドは、英4月週間平均賃金(振れが大きい賞与を除いた分)が前年比+2.7%と上方修正された前月(+2.2%→+2.3%)および市場予想(+2.5%)を上回ったことから、上昇、更にFOMC後のドル安を受けて、対ドルで1.56ドル台半ばから一時1.5847ドルへ1.2%上昇し5月半ばの直近高値を上回った。

対円でも193円丁度近辺からから一時195.63円へ大幅に上昇した。


きょうの高慢な偏見:黒田発言のボディブロー

ドル/円は、6月10日の黒田総裁発言前の水準である124円台半ばを上抜けできずに反落したことから、当面上値の重さが意識されそうだ。

材料面では米コアCPIが重要で、前年比+1.8%と前月からの変わらずの予想だが、既に発表されたコアPPIは前年比+0.6%と前月および市場予想を下回り鈍化基調であることや、前月のコアPCEデフレータも+1.2%へ低下していたことなどから、下振れリスクに注意が必要で、123円丁度を窺う展開となりそうだ。

ユーロ/ドルは、ECBテルトロとユーロ圏財務相会合が注目され、特にギリシャ支援問題では6月末の期限が迫っていることから、今回何らかの進展がないと、ギリシャだけでなくスペインやイタリアの国債へ売り圧力が再び波及するリスクがあり、ユーロ安バイアスがある。

但し、来週まで持ち越される可能性についても認識が広がってきているとみられ、物別れでもサプライズではなさそうで、目先のユーロ下落は限定的となりそうだ。

テルトロは結果の解釈が難しく、低めの市場予想である500億ユーロの供給額を上回ると、ECBのバランスシートが予想よりも拡大する点ではユーロ売りだが、これを元手に銀行貸出が増加し景気下支えに繋がるのはユーロ買い要因だ。

因みに過去3回(昨年9月、12月および今年3月)の供給額は各々826億ユーロ、1298億ユーロ、978億ユーロだった。

豪ドル/米ドルは特段の追加材料はなさそうだが、鉄鉱石価格の反落傾向が上値抑制要因となる一方、RBAの利下げ期待の後退が下支え要因となっており、0.77ドル台でもみ合いの展開となりそうだ。

dayly6-18

山本雅文(やまもと・まさふみ)
マネックス証券 シニア・ストラテジスト

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