1980年代から90年代前半にかけて、日本の電子産業は世界ナンバーワンと言っても過言ではなく、他国を凌ぐ高度な技術や高い品質を武器に輸出を拡大し、世界をリードしていた。その中核にいたのが、グローバル企業の代表格であるソニー <6758> だが、昨今では赤字に苦しんでおり、同社の不調を指摘する声も多い。まず疑問なのは、一体なにが、ソニーの苦境を作りだしたのだろうかということだろう。

大きな要因の1つにあげられるのは、ソニーが垂直統合型の経営を推し進めてきたことだろう。他国では、自社の機能を設計開発に特化したファブレスや、製造に特化したEMSが台頭し、水平統合型の分業体制を敷く企業が急成長。その中で、ソニーは設計も製造も内製化した体制を継続してきたのだ。

ソニーの事業の中でも半導体は無視できない規模となっている一方で、技術革新が早く、経営環境の変化にも迅速に対応しなければならない。が、ほかの巨大化した総合電機メーカーと同様に対応が遅れてきたこともあり、衰退の道をたどってきた。さらに、2000年代に入り、日本の総合電機メーカーは半導体部門を切り離しにかかったが、サムスン電子(韓国)などの台頭に遅れを取ってしまうことになった。

しかし、ソニーには優れた技術と人材がまだまだ存在した。事業ポートフォリオを組み替え、さらにそれに応じたリソース配分を再定義することで、世界市場で競争を戦うことが改めて可能になったのだ。現在、ソニーの中には、外部環境の変化に伴う追い風を受けて好調な事業が育ち始めているという。そのため、2014年度は上場以来初の無配当に転落したソニーだが、2015年度は中間配当も1株当たり10円と回復傾向にある。