Team of Asian business people. Chinese and Indian. (写真=PIXTA)


係長の延長ではない、現場と経営者を結ぶ課長の役割

企業において「課長」という役割は、事業の現場の運営と、会社経営の一部を担う、大変重要なポジションであると言える。しかし、課長に昇進するにあたって、あらためて教育を行っている企業は少ないのではないだろうか。

課長とは、現場の仕事の成果、現場で起きることのすべてに対して責任を負う立場である。つまり、部門の業績は課長が作っているのであり、課長が現場でどのような仕事をしたかによって、会社の業績は大きく左右される。

自ら学び、部下を育て、組織を発展させる―現場のリーダーとして、経営者のひとりとして、課長が心得るべき3つのポイントとは?「アメーバ経営」の導入コンサルティングを行うKCCSマネジメントコンサルティング株式会社の特別顧問、森田直行氏が出版した『稼ぐ会社の「課長心得12カ条」』に、その答えがあった。


部署をひとつの企業と捉える「起業家精神」で組織を発展させる

「中間管理職」などと呼ばれ、会社全体から見るとあまり裁量権を持たないと思われがちな課長だが、上司から言われたことをただ部下に伝えるだけで現状に甘んじているようでは、とうてい良いリーダーとは言えないだろう。

課長の最大の使命は、自分が会社から預かっている課を成長・発展させること。上司と部下の板挟みという制約の中でも、最大限できることを考え、自分なりの革新を生み出していく「起業家精神」が必要不可欠だ。

起業家のように常に、仕事を自分のものとして捉え、ああしたい、こうなりたいなどと自分なりの目標を持っている―課長にはそういった主体性が求められている。視野を広く持って、発展のために高い目標を定める一方で、課内のすべての業務を把握するという、細部にこだわる意識も欠かせない。細かいことでも部下任せにせず、現場の責任者として、課長が論理的に下す判断が、そのまま組織の成果に直結していく。


リーダーシップを発揮して、目標を達成する部下に育てる

課長は部下を直接指導する立場にあり、その課長がどのような指導を行うかによって、部下の成長速度が決まってしまう。部下のためを思うならば、部下が欠点をひとつひとつ克服し、同じ失敗を繰り返さないよう「身にしみる」ように叱ることだ。よく「褒めて育てる」というが、それでは部下に逃げ道を与えることになり、欠点はなくならない。一流の人間には欠点はないということを課長が心に刻み、部下に接していかなければならない。

また、部下ひとりひとりが優れていても、チームとして同じ方向を目指していなければ、組織として大きな力は発揮できない。リーダーは毎日、部下の様子を観察して声をかけることで、部下を良い方向へ導き続ける必要がある。そのうえで、課としての目標を言葉で明確に示し、集団としての方向性を揃えていくのだ。それも、ただ指導するだけではなく、熱意と共感をもっていてはじめて、部下たちの心を動かすことができる。


正しい判断を行うために、向上心をもって自分自身を鍛える

課長として任される仕事の範疇が係長時代とまったく同じということは、そう多くはないだろう。

まず大切なのは、自分が専門性を持たない分野、新しいことに興味を持つことだ。課長に昇進するということは、それだけの経験・判断能力を評価されていると言える。しかし、新しい分野で正しい判断を行うためには、専門的な知識の習得が大前提となる。

次に、衆知を結集すること。部下の意見に耳を傾け、他部門のアドバイスも聞きながら、課としてどのような方向に進んでいくのかを定める。その際、意見を聞く立場にある課長が素直であること、つまり、人の意見を取り入れられる柔軟性を持っていることが重要だ。さらに、自分に問題があったのではないか、と意識して反省する習慣が身に付いていれば、たとえ失敗しても、どうリカバリーするべきか、広い視野で考えられるようになる。

稼ぐ課長となる上で必要でありながら、欠けてしまいがちな3つの資質―起業家精神、リーダーシップ、向上心―は、誰でも身に付け、磨き上げていける能力だ。どんな業態、規模の企業であっても、企業経営の要は課長が握っていることに変わりはない。『稼ぐ会社の「課長心得12カ条」』には、京セラ・稲森和夫名誉会長の薫陶を受け、「アメーバ経営」の伝道師として辣腕を振るう森田氏の、力強いアドバイスが詰まっている。

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