需給・価格判断:内外需給は小動き、仕入コスト上昇への警戒が強く現れる

■需給判断:内外需給は小動き

大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過-供給超過)は、前回比横ばい、非製造業では1ポイント改善した。非製造業では内需の回復や訪日外国人の消費がプラスに働いたと考えられる。製造業の海外での製商品需給も前回から横ばいで推移。悪化したわけではないが、中国をはじめとする新興国の景気低迷の影響を受けたとみられ、改善が見られなかった。

先行きについては、国内需給は製造業で3ポイント、非製造業で1ポイントの改善が見込まれている。製造業の海外需給も2ポイントの改善が見込まれており、海外経済の回復が想定されている可能性が高い。

中小企業は大企業とはやや異なり、国内需給は製造業で1ポイント、非製造業で2ポイント悪化、製造業の海外需給も1ポイント悪化した。先行きについては内外ともに概ね横ばい圏となっており、先行きに対する明るさは出ていない(図表4)。

■価格判断:仕入コスト上昇への警戒が強く現れる

大企業製造業の販売価格判断D.I.(上昇-下落)は前回から2ポイント上昇、非製造業では横ばいとなった。一方、仕入価格判断D.I.(上昇-下落)は製造業で3ポイント上昇、非製造業でも2ポイント上昇しており、原油価格持ち直しと円安によるコスト増加の影響が出ているとみられる。

製造業、非製造業ともに、販売価格D.I.の上昇幅を仕入価格D.I.の上昇幅が上回ったことで、両者の差し引きであるマージン(利鞘)は前回から縮小している。

販売価格判断D.I.の3ヵ月後の先行きについては、製造業が1ポイント上昇、非製造業が1ポイント低下と、ともに小動きが見込まれている。一方、仕入価格判断D.I.は製造業で2ポイント、非製造業で3ポイント上昇する見込みとなっており、マージンはさらに縮小することが見込まれている(図表5)。ここでも原油価格の持ち直しと円安の影響が加味されている模様。

中小企業の販売価格判断D.I.は製造業が前回から2ポイント上昇、非製造業では1ポイントの上昇となった。仕入価格判断D.I.も製造業で2ポイント上昇、非製造業で1ポイント上昇したため、差し引きであるマージンは、前回から変化なし。

先行きについては、販売価格D.I.が製造業・非製造業ともに小幅の上昇に留まる一方、仕入価格判断D.I.が製造業で4ポイント、非製造業で7ポイント上昇と大幅な上昇が想定されており、マージンが大きく悪化することが見込まれている。

理由は大企業と同様と考えられるが、価格交渉力や円安への対応力が大企業に比べて限定的になりがちなだけに、中小企業のコスト上昇に対する警戒感はかなり強い。

日銀短観(6月調査)-5

■売上・収益計画:15年度利益計画は上方修正、円安の折り込みが進む

14年度収益計画(全規模全産業、実績)は、売上高が前年度比0.6%増(前回調査では1.4%増)とやや下方修正されたが、経常利益は5.9%増(同1.9%増)と上方修正された。経常利益は13年度の伸び(前年度比28.4%)には及ばないものの、引き続き増益を確保している。

下記のとおり、事業計画の前提となる為替レートに実績としての円安が織り込まれたことが追い風になったようだ。輸出売上の上方修正が顕著になっており、製造業中心の上方修正であることが、このことを裏付けている。

また、15年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比0.4%増(前回は0.6%増)、経常利益が0.4%減(前回は0.6%増)となった。表面上はともに前回から下方修正されたように見えるが、経常利益については、比較対象となる14年度分が今回かなり上方修正されているため、15年度分も実態としては、前回から上方修正(修正率3.0%)されている。

14年度と同様、経常利益は製造業中心の上方修正になっている。下記のとおり、事業計画の前提となる為替レートに円安が織り込まれたことが修正の一因になっているとみられる。

15年度想定為替レート(大規模製造業)は115.62円(上期115.59円、下期115.65円)と、前回の111.81円から円安方向に修正されている。

ただし、足元の実勢である120円台とはまだ乖離が大きい。さらに、今後米国が利上げに向かう中で、円安ドル高シナリオは崩れそうにない。従って、収益計画についても、今後一段と円安が織り込まれていくことで、大企業・製造業を中心に上方修正される可能性が高い。

日銀短観(6月調査)-6

日銀短観(6月調査)-7

日銀短観(6月調査)-8