アジアREIT不動産ポートフォリオのセクター配分

次に、アジアREIT全体の不動産ポートフォリオについて、セクター配分を確認した。概して、アジアREITの特徴としては、S-REITとH-REITが中心であることに加え、商業施設投資が中心であるとの印象も強い。その主な理由は、H-REITの主要銘柄で香港の商業施設に投資するTheLinkREITと考えられる。

TheLinkREITはアジアREITの中で突出して規模が大きく(図表-6)、その時価総額は、J-REIT最大の日本ビルファンド投資法人を上回り、世界でも上位にある。この1銘柄だけでアジアREIT全体の時価総額の約14%を占めており、グローバルREITファンドのなかには、アジアではTheLinkREITにしか投資していないケースもある。また、H-REITのTheLinkREITに加え、S-REIT最大規模のCapitaLandMallTrustも商業施設に投資する銘柄である(図表-6)。

アジア REIT の時価総額上位銘柄

これら主要銘柄の投資先から、アジアREITの投資セクターは商業施設が中心と認識する投資家が多い。実際、アジアREIT全体の不動産ポートフォリオのセクター配分を確認したところ8、やはり商業施設比率が最も大きいことが確認された(図表-7)。

しかしながら、オフィスやホテルなど、その他のセクターも一定程度を占め、バランスのとれたセクター配分となっている。

不動産ポートフォリオ

◇商業施設

アジアREITとJ-REITで、不動産ポートフォリオのセクター配分を比較すると、やはりアジアREITの商業施設比率の高さが目立つ(図表-7)(8)。

その主な理由のひとつは、上述の巨大なTheLinkREITで、郊外商業モールの約半分はこの1銘柄のポートフォリオが説明している。また、他のREITでも、郊外商業モールへの投資、特に大規模施設への投資が多い。日本国内をみると、郊外商業モールはオペレーショナルアセットとして高い専門性を要し、非常に厳しい競争環境にある。常に施設の目新しさが求められ、客足を維持する努力は並大抵ではない。

一方、アジアでは、先進国のシンガポールや香港であっても、インフレーションおよび賃金上昇が続き、個人消費の伸びが続いている。日本と異なる経済環境の下、郊外商業モールの過当競争は目立たず、比較的安定した投資セクターとなっている。

また、アジアREITでは、J-REITの例が少ない都心のランドマークビルへの投資も多い。ランドマークビルの多くはオフィス、商業、ホテルなどの複合施設であるため、それらの商業施設部分の累積により、都心の高級商業施設への投資もかなりのボリュームがある。

◇都心オフィス

J-REITの不動産ポートフォリオでは、オフィス比率の高さが特徴的で、かなり低下した現在でも5割近くを占めている(図表-8)。

アジアREITについても、J-REITほど高い比率ではないが、オフィスが主要投資セクターであることに違いはない。

しかし、その内容はJ-REITと大きく異なっている。J-REITでは無数の中規模ビルがポートフォリオを構成しており、ランドマークといえる超高層ビルや複合ビルへの投資事例は少ない。そのようなビルの多くは、開発主体である大手不動産会社が長期的に保有している。

一方、アジアREITの超高層ビルや商業複合ビルへの投資は比較的一般的である。スポンサー企業から1棟全体を取得するだけでなく、スポンサー企業と持分を共有するケースも多い。