アジアREITファンドの注意点

アジアREIT市場は、S-REITとH-REITが時価総額の大半を占めるものの、投資先の不動産ポートフォリオをみると、中国やASEANなどのアジア新興国への国際分散も効いており、また、セクター配分では、商業施設比率が高いものの、その他のセクターにもバランス良く分散投資していることが確認された。

アジア新興国での実物不動産投資については、規制や市場慣習などの違いから実務面の制約が多く、海外投資家にとって投資手段が限られている。S-REITやH-REITによるアジア新興国投資は、幅広い投資家にREITを介した貴重な投資機会を与え、その拡大により投資家の選択肢を広げている。

さらに、今後は、新たにREIT制度を導入したインドなど、これまでREIT市場の発達が遅れていた国でも投資機会の拡大が期待される。

最近、日本国内でもS-REITやH-REITに投資するアジアREITファンドが普及し始めており(12)、日本からも手軽にアジアの不動産市場への分散投資が可能となっている。それらの投資信託も、部分的にアジア新興国での不動産投資を含んでおり(13)、今後、その比率は高まっていくと見込まれる。

アジアREITファンドを通じ、アジア新興国の成長性や分散投資効果の拡大を享受できるようになれば有意義である。ただし、アジアREITの不動産ポートフォリオにみられる新興国比率の拡大は、J-REITにはないダイナミックな変化であり、リスク管理上無視できないものでもある。アジアREITファンドを長期保有する場合も、定期的にREITの不動産ポートフォリオの概要を把握しておくことが重要となる。

(1)実質的上場 REIT であるタイのプロパティーファンドとシンガポールの不動産ビジネストラストを含めている。
(2)シンガポール上場のS-REIT、香港上場のH-REIT、タイ上場のThai-REIT、マレーシア上場のM-REIT、台湾上場のT-REIT,韓国上場のK-REIT。
(3)タイのプロパティーファンドとシンガポールの不動産ビジネストラストを含めない場合、S-REITとH-REITのアジアREITに占める比率は約9割に及ぶ。
(4)2013年11月に上場したイオンリートは、マレーシア、ジョホール州のイオンショッピングセンターに投資している。
(5)アジアREITの全銘柄を時価総額比例で取得した場合に得られる不動産ポートフォリオともいえる。銘柄毎にP/NAVやレバレッジの高低などは異なるが、全体を1つのポートフォリオとしてみる。
(6)タイのプロパティファンドは海外不動産投資を実施しておらず、簡易的に時価総額の数値を代用。
(7)スポンサー企業のYTL Corporation Berhadは国際的にインフラ、不動産開発事業を展開。S-REITのStarhill Global REITのスポンサーでもある。
(8)複合施設についても、可能な限り商業施設部分とオフィス部分などの各数値を区分集計している。個別物件の情報開示が不十分な市場を除き、S-RIET、H-REIT、M-REITを集計対象としている。
(9)日本国内では、ビジネスホテルは宿泊特化型の低価格ホテルを指し、高級シティホテルと区別されているが、海外の主要都市では、5ツ星ラグジュアリーホテルなどがビジネス用途で多用され、低価格ホテルは観光客用の位置付けとなっている。
(10)ホテルとコンドミニアムの中間的な宿泊施設で、家具、家電及び日用品が具備され、フロントサービスやハウスクリーニングサービスなどが受けられる。
(11)産業用オフィス関連のJ-REITの投資事例には、産業ファンドが投資するテクノロジーセンターや、ヒューリックREITが投資するデータセンターなどがある。
(12)増宮 守、「拡大するREIT型投資信託、成長速度はネットサービス業も圧倒」ニッセイ基礎研究所、研究員の眼2015/6/15
(13)実際のアジアREITファンドは、アジアREITの全銘柄に投資するものではないため、必ずしも新興国の不動産投資を含むとは限らない。

増宮守
ニッセイ基礎研究所 金融研究部

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